支え合い、備え、いのちをつなぐ
『震災リゲインpress』 転載記事
35号 発行:2021年4月11日

海と森のふるさと 雄勝への想い

<記事:藤田沙智代 イラスト:飯川雄大>

小学5年で被災し、15歳から語り部を続けてきた藤本和(のどか)さん。
高校卒業を機にふるさと雄勝へ戻った彼女に、町への想いを聞きました。

◎ あの震災から今日までのこと ◎
碧く美しいリアスの海と恵み豊かな山に囲まれた、宮城県石巻市雄勝町(おがつちょう)。東日本大震災で最大遡上高21mの大津波が襲い、町の8割が壊滅、約4300あった人口は1000人以下に激減しました。
雄勝小学校5年生だった藤本和(のどか)さんは、教室の掃除中に地震に遭い校庭へ避難。車で迎えに来た母親と高台を目指す途中、背後から黒い波に追われ、車を乗り捨て崖をかけ登り、九死に一生を得ました。幸い家族は無事でしたが自宅と学び舎は全壊、乗っていた車も流されてすべてを失ってしまったといいます。叔母の家で2年間暮らした後、実家は石巻市内の他の地域に新築されたのだそうです。
現在21歳の藤本さんは、15歳から語り部の活動を続け、自分自身の体験を多くの人に語ってきました。
「小学校の恩師の勧めで始めました。もともと作文などが得意で、人前でお話することも好きだったのです。自分の震災記憶は貴重なものだと気づき、それを他の人に渡し、受けた人が災害時に思い出してくれればと。義務感のようなものもあって続けてきました。すべての人に理解してほしいわけではなく、話を聞きたい人に無差別に種をまいているという感覚です。それが芽吹くかどうかは相手次第と思っています」。

◎ふるさとの明日をつくりたい ◎
高校3年時、大学進学も考えつつもふるさと雄勝へ戻ることを決断。築93年の廃校をリノベーションした子ども向け学習施設MORIUMIUS(モリウミアス)に就職しました。サステナブルをテーマに自然の恵みを中心とする循環型の暮らしを宿泊体験できる場所です。コロナ禍以前は年間1000人ものゲストが国内外から訪れて地元の人々と交流し、雄勝を第二の故郷と慕うリピーターも多いといいます。
「私は雄勝が大好き。山に囲まれ風がグルグルと回る、穏やかな海、ザリガニをとった沢。もともと過疎のうえ震災で人が減り、住民の7~8割は高齢者。このままだとゆっくりと眠るように町がなくなる。自分が雄勝に帰って町の寿命を伸ばしたかった」。
教育と観光の2つの側面を持つMORIUMIUSで、外から多くの人を呼び、また戻ってきてくれるよう頑張りたいと話す藤本さん。子どもたちに向き合い、語り部も担当するほか、災害危険区域を“花と緑の力で”復興させるまちづくりプロジェクト「雄勝ガーデンパーク構想」にも携わっています。
小学6年時、雄勝の地形を再現し未来のまちをジオラマで作る授業を経験。遊園地や商業施設など楽しいものばかり考えていたが、保護者にアンケートを取ったところ、必要なのは「住む場・働く場・学校・病院」という4種の答えのみ。自分たちは暮らすことを考えていなかったと反省し、以来まちづくりは自身の中の大きなテーマになったのだそう。
「災害時に一人も死なない町を作りたい」というのが雄勝へ戻った和さんの根底に流れる強い想い。「何もなくなったからこそ何でも作れる! 作りたいのは、海の方向が示され逃げることができる町、子どもも大人も外の人も誰が見てもわかりやすい町、退屈することがない町、住んでいる人に住みよい町。
雄勝の人でふるさとへ帰りたいけれど帰れない人もいる。とりあえずの目標は同級生全員を帰って来させること」とあくまでポジティブな信念を語ってくれました。

▲関連情報
【行ってみよう】
今回取材した藤本和さんの勤務先
公益社団法人MORIUMIUS(モリウミアス)
宮城県石巻市雄勝町桑浜字桑浜60
http://moriumius.jp/


第35号 は、他以下の取組みをご紹介しています。
いま、東北の地で
2面 ● みちのく潮風トレイルを歩く
3面 ● もしものときの生活再建入門 ● 3.11伝承ロードを訪ねて ● 読み・聞き あれこれ
4面 ● 寄付・支援のいま ● 復興庁の取り組み
続きはこちらからご覧ください。

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