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201904.22

国家公務員から起業家へ。月額1.5万円泊まり放題のサービス代表に聞いた、パラレルキャリアのすすめ

働き方改革によって副業を解禁する企業が増え、本業を持ちながら、並行して複数の活動を行う「パラレルキャリア」も一般的になってきました。昔に比べて平均寿命が延び、仕事のほかにも生涯続けられることを前提とした活動を始める人も増えています。

そこで、パラレルキャリアの推進を一つの目的とするサービス「Hostel Life」を運営する株式会社Little Japanの代表取締役である柚木理雄さんに、パラレルキャリアについてお話をうかがいました。

柚木さんご自身も、かつて平日は農林水産省の国家公務員として働き、休日はNPOでボランティアをするというパラレルキャリアを歩んでこられました。また、現在はLittle Japanを経営するビジネスパーソン、NPO芸術家の村の代表、大学の特任准教授という3つの顔を持っています。

ご自身のご経験も踏まえながら、パラレルキャリアで得られたことや、パラレルキャリアに踏み出す際の注意点などをお話しいただきました。

「Hostel Life」は、新しいチャレンジを応援するサービス

―最初に、「Hostel Life」のサービス概要をお聞かせいただけますか。

―柚木
「Hostel Life」は、月額1万5千円から販売している「ホステルパス」を購入すると、「Hostel Life」に登録するホステルに泊まり放題になるサービスです。たとえば東京には、通勤通学に1時間以上をかけている人が50%以上もいると言われています。そういった方々が毎日満員電車で通勤するのは大変です。「Hostel Life」が提案するのは、平日は会社近くのホステルに泊まってそこから通勤し、休日は郊外の家で過ごすという暮らし方。定期代の代わりに「ホステルパス」を購入すれば、余計なお金もかからず、時間にも体力にも余裕ができます。その余ったリソースで、別のことにチャレンジできるようになるのです。

また、この方法であれば、会社と家の往復が週に一度だけでよくなるため、会社から片道2時間、あるいは3時間の場所に家を構えることもできるようになります。

つまり東京を中心とすれば、群馬や栃木、長野や新潟でさえも通勤圏内になる。故郷に帰って地域の活動をしたり、同じ家賃で都内よりも広い家に住んだり、海や山で趣味に没頭できたりと、これまではリモートワークやフリーランスなど一部の人にしかできなかった生活が、誰でも選択できるようになります。

―柚木
Little Japanは、地域の空き家の活用と担い手不足の解消にも取り組んでいます。また、都内には空き家を活用したゲストハウスが増えていますが、訪日外国人の数以上に増えているためお客さんが入らず、このままではまた空き家に戻ってしまう懸念があります。「ホステルパス」で二拠点居住をする人が増えれば、地域の空き家に住人が入って担い手不足が解決でき、同時にゲストハウスの部屋も埋めることができます。今後はこの二拠点居住をさらに推進するため、空き家をリノベーションし、東京への通勤を前提とした住居を整備していく予定です。

「Hostel Life」は、利用者はもちろん、地域社会やホステルの経営者など、さまざまな人にとってメリットのあるサービスなのですね。

二拠点居住で、コミュニティの輪も広がる

―「Hostel Life」は昨年12月に正式リリースされました。利用者の方の反応はいかがですか。

―柚木
12月の時点では2カ月分の「ホステルパス」を購入した人が多かったのですが、4カ月経った今でもほとんどの人が延長してくれています。サービスとして楽しんでもらえているのではないでしょうか。また、毎回同じホステルに宿泊することでゲストとホステルの関係も深まり、ゲストにとっては宿と家の間のようなくつろげる場所に、ホステルにとってはホステルを一緒に盛り上げてくれる存在になっているようです。

取材で訪れた日の前日には、ホステル「Little Japan」で「ホステルパス」の利用者さんが企画した交流会が行われていたとのお話も。まさに第二の家のような雰囲気が伝わってきます。

―柚木
今後は、都内から2時間以上離れた場所であっても、「ホステルパス」を利用すれば十分に通勤可能であることを広めていきたい。それはコストの面でもライフスタイルの面でもメリットがあり、誰もが持てる選択肢なんです。

パラレルキャリアの経験が、起業に生きた

―柚木さんご自身もパラレルキャリアを歩んでこられましたが、実感しているパラレルキャリアの良さなどはありますか。

―柚木
公務員とNPOを同時にやっていて良かったと思うのは、Little Japanを起業しようと考えたときに、NPOでの経験が役立ったことです。

柚木さんは東日本大震災がきっかけでNPOの活動を始めましたが、それ以前は飲み会やテニス、スノーボードなどにお金と時間を使っていたそう。

―柚木
遊びの趣味も楽しくて良かったのですが、どちらかといえば消費に近い感覚でした。でもNPOの活動は、お金や時間をたくさん費やしても、その分だけ投資効果として積みあがっていく感覚があったんです。

NPOの活動を通して得た知識や関係性があったからこそ、公務員を辞めて新たなパラレルキャリアに踏み出したときにも、すんなり進むことができたといいます。

―柚木
いきなり公務員を辞めて起業しようと思っても、事業経験がなければ難しい面も多かったと思います。その点、パラレルキャリアとして経験を積んだため、リスクを低く抑えたままやりたいことにどんどんチャレンジできました。

新たなチャレンジをしたいと思っても、いきなり転職するのはリスクが高く、それゆえに選択肢が狭まってしまうこともしばしば。

一方、収入の柱をしっかりと持ちながらパラレルキャリアとしてチャレンジすれば、素直にやりたいことが選べるとのこと。たしかに、時間の制約はあれど、チャレンジの幅は広がりそうです。

始めてみれば、きっと新しいことが見えてくる

―パラレルキャリアをどんな方に勧めたいと思われますか。

―柚木
みんなやればいいのにと思うほどです。でも、その時間を家族と大切に過ごしたり、趣味に没頭したりすることも選択肢の一つで、それもある意味ではパラレルキャリアなのではないでしょうか。ボランティアをする、もう一つ仕事を持つといったことも、同じく選択肢の一つとしてそれを選ぶかどうかなのだと思います。

大事なのは、自分が何をやりたいか。やりたくなければ無理にやるようなことでもないといいます。

その数ある選択肢からNPOでのボランティア活動を選んだ柚木さん。その結果、起業や大学の特任准教授など予想もしていなかったキャリアが開けていきました。

―柚木
ただ、ボランティアにせよ何にせよ、一度始めれば多少なりとも責任が発生するので、ある程度の覚悟は必要だと思っています。考え方としては、副業ではなく“複”業。どちらも同じようにしっかりと取り組む意識でいた方がうまくいくし、長く続けていけるのではないでしょうか。

とはいえ、最初は誰も何も分からないもの。どうすれば最初の一歩を踏み出すことができるでしょうか。

―柚木
1年ならば1年という期間を決めて、とにかく小さなことからでも始めてみるといいと思います。そこから新しいことが見えてきたり、思わぬ世界が広がったりすることもあります。少なくとも、僕はやってよかったと思っています。

新しく始めたいことがあるのなら、収入の柱はしっかりと持ったうえで挑戦してみる。それを「ホステルパス」は応援してくれます。

働き方や暮らし方の選択肢が広がっている今だからこそ、自分が本当にやりたいことに向き合い、そのすべてを叶える方法を考えてみてもいいのかもしれませんね。

柚木さん、お忙しいなかありがとうございました。

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