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202005.12

時代とともに消費行動はどう変わった?メディアとの関係から考える購買行動モデルの変遷

消費者の行動は、社会の変化、特にメディアやテクノロジーの在り方によって変化してきました。そうした購買行動や、根底にある消費者の感じ方・考え方を捉えるべく、リサーチとモデル化を繰り返してきたのが、マーケティングの歴史の一側面であるともいえます。

今回は、これまでに構築されてきた購買行動モデルを、その背景にあるメディアの進化の過程と併せて振り返ります。消費行動が時代とともにどう変遷してきたかをたどりながら、これからのマーケティングについても考えてみましょう。

【~2000年頃】マスメディア広告時代の消費行動


インターネットが登場する以前に消費者の購買行動を方向付けていたのは、マスメディア広告。当初は新聞や雑誌の広告、街頭のポスター、やがて登場したラジオやテレビのCMが消費者の主な情報源でした。

マスメディア広告は、企業から消費者へ一方通行的に情報が提供されるのが特徴。逆にいえば、消費者は自ら情報を探し、獲得する手段がほとんどなかった時代であるといえます。

●AIDA、AIDMA
マスメディア広告時代の購買行動モデル・AIDAは、1900年にアメリカで提唱されました。消費者の心理プロセスは次のように捉えられています。

Attention(注意):広告を目にすることで商品を知る。
Interest(興味、関心):商品に興味を惹かれる。
Desire(欲求):商品を「欲しい」と思う。
Action(行動):実際に商品を購入する。

このDesireとActionの間に、「Memory(記憶)」が加えられているのが、1920年代に提唱されたAIDMAです。消費者は広告で商品を知り、興味を持ち、欲しいと思ったら、その感情を記憶にとどめておいて、後ほど購入に至る、と考えたものです。たとえば「広告を見たときはお金がなくて欲しい商品が買えなかったけれど、お金がたまったので後日で購入した」「商品を知って欲しいとは思ったけれど、実際に買うまでに迷っていた期間がある」といったプロセスが想定されています。

約100年前に作られたモデルであるとはいえ、今でもマスメディア広告は一般的に用いられている手法。そう考えると、今でも現役のフレームワークであるといえるでしょう。

【2000年代】インターネット検索時代の消費行動


インターネットが一般化すると、消費者自身がインターネットで情報を検索し、WEBサイトやブログから商品の情報を収集したり、購入・利用した商品の情報を消費者が広く発信したりできるようになりました。

消費者の能動的な働きかけが可能になり、企業と消費者の関係が双方向的なものに変わってきたのが、この時代の特徴。企業側にとっては、商品のいい評価を消費者に広く・スピーディに拡散してもらえるようになったと同時に、悪い評価が急速に広がって、時には炎上してしまうリスクも高まったといえます。

●AISAS
インターネット検索時代の代表的な購買行動モデルがAISASです。日本の電通が2004年に発表しました(翌年に同社が商標登録)。

Attention(注意):広告を目にすることで商品を知る。
Interest(興味、関心):商品に興味を惹かれる。
Search(検索):購入するべきか判断するためにインターネットで検索する。
Action(行動):実際に商品を購入する。
Share(共有):購入体験をインターネット上で共有する。

いうなれば、「テレビのCMを見て気になったけれど、15秒の映像ではよくわからないから、詳細を商品公式サイトやネット上の口コミを見てみる」といったプロセスを踏まえているのが、Searchということになります。Shareについては、2004年当時はブログや口コミサイト、その後はSNSで広く行われるようになっていますよね。今になってみれば当然の消費行動ですが、当時は大きな変化だったのではないでしょうか。

●ZMOT
購買行動モデルではありませんが、2011年にGoogleが提唱したZMOTも、インターネット時代の消費行動を捉える際に欠かせないキーワードです。

ZMOTはZero Moment of Truthの略で、「消費者が、商品購入のために店舗を訪れる前=ゼロの段階で、購入の意思決定をする瞬間」を意味します。その瞬間が訪れるのは、インターネットで事前に商品の詳細を調べたり、ほかの選択肢と比較検討したりしているとき。このZMOTに、消費者が求める情報をいかに提供するか、消費者の心をいかに動かせるかが重要だというのが、Googleの主張です。

表現は異なりますが、AISASと考え方はほぼ同様なのではないでしょうか。

【2010年頃~】スマートフォンとSNS、コンテンツマーケティング時代の消費行動


2010年前後にはスマートフォンが普及し、より多くの人が気軽にインターネットを利用できるようになりました。

また、FacebookやTwitterといったSNSの利用が拡大したのもこの頃から。2010年3月には、アメリカでFacebookのアクセス数がGoogleを上回りました。誰もがより気軽に情報を発信できるようになったことで、インターネット上には情報があふれ、消費者が自分一人の力(=検索)だけでは価値ある情報を見つけにくくなってきたのが、近年の状況です。そうした中、消費者がいかに情報に「共感」できるかが、マーケティングのカギになっているといえます。

●VISAS、SIPS
消費者が共感を覚えやすく、購買行動に影響しやすい情報のひとつが、SNSでつながる発信者からの情報です。そうした中、SNSマーケティングを考える上でのフレームワークとして登場した購買行動モデルが、VISASやSIPSとなっています。

・VISAS
Viral(口コミ):(SNSで)口コミを見て商品を知る
Influence(影響):口コミやその発信者に影響を受ける
Sympathy(共感):影響を受けたことで商品に共感する。
Action(行動):商品を購入する。
Share(共有):商品の評価を(SNSで)共有する。

タイムラインで流れてきた投稿を通じて、消費者自身が認識していなかった潜在ニーズが発掘される可能性があるのが、SNS時代のマーケティングのポイントですよね。

・SIPS
Sympathize(共感):発信者(企業、知人、著名人など)の情報に共感する。
Identify(確認):共感した情報が自分にとって有益かあらゆる手段で確認する。
Participate(参加):購入やリツイート、「いいね!」などの行動で販促活動に参加する。
Share & Spread(共有・拡散):つながりの中で参加したことを共有・拡散する。

SIPSのモデルでは、企業が社会活動や日常の様子など共感を呼び起こすような情報を発信することで、商品やブランド自体をアピールし続けなくても、共感の輪が消費者の間でどんどん広がっていくような消費行動のサイクルが想定されています。

●DECAX
2015年頃からは、企業によるコンテンツマーケティングも活発化します。企業は従来の広告のように商品を直接的に売り込むのではなく、まず、消費者の疑問や関心に応えるような情報を提供。そこから段階的に関係性を深めていき、最終的に購買へと導くのが、コンテンツマーケティングの考え方です。

このコンテンツマーケティングのフレームワークとなる購買行動モデルが、DECAXです。

Discovery(発見):(レコメンドなどを通じて)役に立つコンテンツを発見する。
Engage(関係):コンテンツを体験する中で発信元企業と関係を深める。
Check(確認):コンテンツの信ぴょう性を含めて発信元企業や商品を確認する。
Action(行動):商品を購入する。
eXperience(体験と共有):商品購入の先にある体験(アップグレードやTIPSなど)をし、その体験を共有する。

マス広告のように企業が大規模な認知を獲得しにいくというよりも、個々のユーザーに最適化されたレコメンドなどからコンテンツを発見する段階を想定している点が、今の時代をよりリアルに表しているといえるのではないでしょうか。

おわりに

マスメディア広告の時代から、インターネットの一般化や、スマートフォン・SNSの普及を経て、変化を遂げてきた消費行動。さらに近年では、ECサイト利用の一般化による「パルス型消費」1、シェアリングエコノミーの普及による「SAUSE」2といった消費行動のパターンも指摘されるようになっています。とはいえ、過去に構築された購買行動モデルには、現在においても有効なフレームワークが少なくありません。より多様化・複雑化する消費行動をいかに本質的に捉えるかが、これからのマーケティングでは一段と重要になりそうです。

*1スマートフォンを眺めていて偶然見つけた未知の商品(日用品を含む)を、その瞬間に躊躇なくECサイトで購入する、突発的な消費行動。2019年にGoogleが提唱。
*2 フリマアプリでの再販売を念頭に新商品を購入する、一時利用的な消費行動。2019年に三菱総合研究所が提唱。

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