201902.26

災害時はアレルギー対応にも理解を

支え合い、備え、いのちをつなぐ
『震災リゲインpress』 転載記事
28号 発行:2019年2月20日

災害時はアレルギー対応にも理解を

 現代日本では3人に1人が何らかのアレルギーをもち、大人も突然発症することがあるといわれます。近年増えている食物アレルギーでは、卵や牛乳、魚介類など一般的な食品を口にできない人たちがいて、命に関わることも。災害時の課題でもあることが、昨年の西日本豪雨でも浮かび上がりました。

◎ 広島県三原市からのSOS ◎
 広島県南東部の三原市。普段は穏やかな瀬戸内海に面した港町ですが、2018年7月の豪雨で市内9か所の河川が氾濫。お年寄りら8人が犠牲となりました。「広島の三原が大変だ」。関西の知人からそう聞かされた私は最初、土地勘がなくピンと来ませんでした。テレビが盛んに報じていたのは岡山県倉敷市や、広島県でも西部の呉市など。三原市はちょうどその中間あたりです。知人はアレルギーの子を持つ親のネットワークに入っており、「三原からSOSが出ている」と言います。私の拠点、名古屋で全国的に活動する認定NPO法人「アレルギー支援ネットワーク」に聞くと、確かに三原からも要請があり支援物資を送ったが、現地の詳しい状況はつかめないとのこと。私は取材者として何かできないかと三原入りを決断しました。

◎ 母親たちも行政も混乱 ◎
 現地に着いたのは豪雨の約1週間後。地元の母親たちからなる「三原アレルギーの会ひだまり」が必死にアレルギー対応食の仕分けなどをしていました。持ち寄ったものや全国から送られてきたものをボランティアセンターの一室に集めましたが、そこから誰にどう届ければよいか、途方にくれている状態でした。
 会は前年の2月に結成されたばかり。災害時の対応は名古屋の支援ネット関係者の講演で学んだメンバーもいましたが、実際の災害は「まったく未知の世界でした」と代表の矢島恵子さんは振り返ります。
 行政の窓口も混乱し、備蓄しているはずのアレルギー食が「ない」とされたり、避難所でも呼び掛けをしてもらえなかったり。取材をすると、行政としては限られたアレルギー患者に特別扱いはできず、またアレルギー対応食は間違えて出すと大変との意識がありました。しかし、当事者には命に直結する問題です。

◎ 人ごとでないアレルギー ◎
 「アレルギー患者のいる家庭でも備蓄はしていますが、1週間となるともちません。自宅が浸水したならなおさら。自助では限界があります」と母親の一人。
 最終的には多方面からの支援で乗り切れましたが、会はこの豪雨からの教訓から、災害時の関係機関との連携や、日頃の啓発活動により力を入れていくことに。今年も医師を招いた講演会や、「アレルギーがあっても食べられる炊き出し講習会」などを開きました。
 災害時のアレルギー対応をきっかけに、特別な配慮の必要な人たちにもケアをする体制づくりが進むかもしれません。ひだまりのような会が身近にあれば、ぜひ関心を持ち、支援の手を差し伸べてください。

三原アレルギーの会 ひだまり
認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク

行政、災害ボランティア、NPOの三者連携を作り上げる

内閣府防災担当

 地震や水害などの際に開かれる「情報共有会議」。そこでは市や県などの行政、災害ボランティアセンターを開設する社会福祉協議会、そして災害援助関連NPOらが一堂に集まる。本格化したのは、2016年の熊本地震のころからだ。
 現代の災害対応では、行政に加えて、ボランティアや、多様なNPOなどが協働する流れがある。たとえば、自分たちの得意分野で被災地の役に立とうとしている災害NPO。重機を用いる土木の専門家集団や、炊き出しを行うグループなど多種多様だ。だが、こうした動きも、行政やボランティアとの連携が取れていないと、支援の漏れ、抜け、ムラが生じてしまう。情報共有会議の大きな役割は、そうした事態を防ぐことでもある。そしてこの会議には、内閣府防災担当のスタッフが出席することもある。
内閣府防災担当といえば、被害の状況を分析して災害救助法を適用する、あるいは激甚災害の指定を行うなど、中央から俯瞰的に状況を判断する仕事で広く知られる。しかしこれらと並行し、発災直後から現地に駆けつけ、関係機関、NPOらの連携を強める調整役も、内閣府防災担当の大切な仕事なのだ。
 さらに、平時から内閣府が行なっているのが、行政、ボランティア、NPOの三者連携の訓練。全国社会福祉協議会(全社協)、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)と共に各県に赴き、三者連携の必要性を説き、連携の予行練習を行うものだ。この三者が互いに繋がりを築いておくだけでも、発災時には大きな力になる。都道府県の担当職員は2年ほどで異動するが、つながりが途切れぬよう、主要な災害NPOのリストを引き継ぐようにしている。
 「災害関連だけでなく、ふだん環境や社会的活動を行なっているNPOでも、災害ボランティアグループとして機能する場合があります。大切なのはNPOの持つネットワーク。昨年の愛媛や北海道の災害でも、環境NPOがさまざまな局面で活躍しています」と語る のは、内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(普及啓発・連携担当)佐谷説子さん。
  もうひとつ佐谷さんたちが力を入れるのが、チーム防災ジャパン(https://bosaijapan.jp)の活動だ。 最初はホームページでの活動のみだったが、最近は 地域の防災リーダーを集めたイベントも開催する。
  「地域防災に関わり得る、多様な分野の人々が知り合うことに重点を置き、もしもの時のネットワークを強化するのが狙いです。防災はひとりでは取り組めません。そのために、多くのつながりを活かすことが防災の第一歩と考えます」(佐谷さん)。 (加藤久人)

現場の連携事例をまとめた内閣府発行の小冊子『防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック〜三者連携を目指して〜』もぜひご一読を。


第28号 は、他以下の取組みをご紹介しています。
列島の復興と営み
2面 ● 各地の復興の営み(北海道/熊本県/岡山県)
3面 ● もしものときの生活再建入門 ● 震災アーカイブシンポ ● 書評ほか
4面 ● 人と復興 ● 行政の取組み
続きはこちらからご覧ください。
記事:関口威人 イラスト:飯川雄大 
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