201902.04

「待ち時間」に価値をもたらす。タイムイノベーションが変革する時間の価値

あなたは「この時間、もったいないな…」と感じたことはありますか。
移動時間やお店に並んでいる時間が煩わしく感じ、「時間がかかりそうだからやめよう」と思ったことも多々あるかと思います。

では、その時間が“価値”に変わるとしたらどうでしょう。例えば15分の待ち時間が、300円分のクーポンに変わるとしたら。「それなら待ってみようかな」と思うかもしれませんよね。

Time Innovation Pte. Ltd.は、このように時間を価値に変える画期的なサービスを開発しました。具体的にどのようなサービスなのか、そのサービスを使えば企業や個人にどのようなメリットがあるのか、CEOの佐和田悠葵さんにうかがいました。

時間が生む価値とは

―まず、タイムイノベーションはどのようなサービスなのでしょうか。

―佐和田
端的に言うと、ポイントサービスです。

購入金額に応じて貯まるポイントや、飛行機での移動距離に応じて貯まるマイルと似たイメージを持っていただければと思いますが、当社のサービスでは、みんなが平等に手にしている“時間”を軸にしています。

時間をポイントに置き換えるとは、どのようなことなのでしょうか。まず、時間が価値に変わることの例を挙げていただきました。

―佐和田
分かりやすいのは、百貨店です。百貨店では、滞在時間が長くなれば購買機会が増えることが統計として出ています。

例えば、百貨店のエスカレーターを上がっていくと、3階までは普通に上がれても4階に行くためのエスカレーターは逆サイドや少し離れたところについていて、フロアを歩かされるというシーンが出てきます。
それは、歩いている間に無意識に商品を見て、場合によっては購入に至ることがあるからです。つまり、エスカレーターの位置をずらすことによって、ただ上の階に上がるのではなく、商品を見てもらう時間を増やしているのです。

一般的に、ポイントサービスは店舗に足を運んでもらう動機付けになります。その際、時間を価値に変えるタイムイノベーションのサービスならば、店舗側にプラスアルファのメリットも得られるのだそうです。

―佐和田
例えば、平均滞在時間が1時間半の水族館があったとします。

水族館などでは入場料300円引きといったクーポンを出していることがありますが、それでは来館してもらうために300円を捨てているようなものです。
そうではなく、例えば2時間滞在したら500円分のポイントが貯まるとすると、水族館をひと回りして余った30分で売店を覗いてみようかということになる。
そこで3000円のかわいいぬいぐるみが目に留まり、購入に至ったとすれば、ポイントで500円値引きしていても、3000円の購買が生まれるわけです。つまり、2500円がプラスアルファの価値になります。

ただのクーポンではない、プラスアルファの価値

―そもそもサービスを開発するきっかけは何だったのでしょうか。

―佐和田
私はタイムイノベーションのほかに、システム開発会社のObjectSを経営しています。
ObjectSではクーポン配信アプリの開発依頼をよくいただくのですが、リリースしたアプリの分析を行うと、たしかにクーポンは来店の動機付けにはなっていても、例えば水族館であれば夏休みに行こうと考えていたのを春休みにしただけ、小売店であれば欲しいと思っていた商品を予定通り買って帰るだけというように、プラスアルファのメリットがほとんど得られていないことが分かったんです。

それならば来店頻度を増やそうと働きかけるのではなく、1回の来店でより大きなメリットが得られるようにしようと考え、滞在時間を延ばすことを思いついたそうです。

佐和田さんにはもう一つ、ポイントサービスを通して実現したいことがありました。

―佐和田
これは私自身の体験でもあるのですが、例えば航空会社を利用してマイルが貯まると、空港でお酒が飲めるラウンジに無料で入れたり、飛行機のプレミアムシートにアップグレードされたりといったロイヤリティサービスを受けられることがあります。
その結果、それまではチケットの値段で航空会社を決めていたのが、数百円の差ならばロイヤリティサービスを受けられる方にしようと考えていることに気がつきました。

値段ではなくサービスの質が選択の基準になっている。これはおもしろいと思い、ポイントサービスを顧客の囲い込みにも役立てたいと考えました。

タイムイノベーションのポイントサービスを導入する店舗や業種が増えていけば、それだけ顧客の行動データが溜まります。
それによって、年齢や性別だけでは判断できない個人的な嗜好を知り、自社の顧客はもちろん、初めて自社を利用する顧客にも一人ひとりに合った付加価値を付けてサービスを提供できるようになるのですね。

本社機能をシンガポールに置く理由

― 今年1月に日本法人を設立されたとのことですが、それまではシンガポールを主な拠点とされていました。それにはどういった理由があるのでしょうか。

―佐和田
タイムイノベーションは、日本だけでなく世界中のさまざまな地域でサービスを導入していきたいと考えています。
その際に、日本流のものを海外に押し付けるのではなく、それぞれの国のニーズに合わせた形でサービスを提供したいと考えました。
しかし、日本にいても海外の思想は入ってこないのが現状です。そこで、海外に本社機能を置くことにしました。

シンガポールは多民族国家で、中国人、欧米人、アラブ人など多数の国から人が集まってきています。そのため、いろいろな国の人や文化を知ることができると考えて選択したとのこと。

―佐和田
私も昨年5月にタイムイノベーションを設立してからシンガポールに住んでいます。
実際に住むと、訪れただけでは気づかない文化の違いに触れたり、意外な共通点を発見したりと、まさに百聞は一見に如かず。すぐにいろいろな国の方々と話ができるということも、ビジネスにとても役立っています。

さまざまな国の人との交流の中で、海外では想像以上にキャッシュレスが進んでいることも分かったそう。

―佐和田
今のところは付加価値をもらうためのポイントサービスという形になっていますが、将来的にはポイントで物が買えたり、チャージしたりもできる、電子マネーに近いものとしてキャッシュレスに繋げていきたいと考えています。ポイントサービスは、その先駆けとして手がけているんです。

タイムイノベーションのサービスを普及させ、Eコマースの台頭により実店舗離れが進む現状に一矢報いたいと話す佐和田さん。
商品を直に見られる、触れられる、試せるといった実店舗の良さをアピールしつつ、来てもらうだけではなく滞在してもらい、その場で消費を生ませることを目指しています。

現在は、タブレット端末を使用した決済サービスを提供する会社と提携の話が進んでおり、まずは日本全国20万店舗への導入を見込んでいます。

時間を価値に変える画期的なサービスが拡大することで、私たちの購買行動や生活にどのような変化が起こるのか。楽しみにして、期待したいと思います。

佐和田さん、お忙しいところありがとうございました。

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