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201905.27

ブランディング、本当にわかってる?日本を代表するスペシャリストに聞く、ブランディングのABC

昨年8月、ビジョンは、自社が提供する海外向けWi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi」のブランドロゴを変更しました。

デザインを考案したのは、株式会社d.d.d.の石澤昭彦さん。石澤さんは、「ブランディング戦略」という言葉が聞かれるようになった2000年ごろに、当時勤めていたADKの方針により海外でブランディングを学び、会社に持ち帰ってブランドデザインの専門部署を立ち上げました。

そして、2010年にd.d.d.を設立し独立。その後も、企業や商品、サービスのブランド開発、ロゴマークやスローガンの開発、広告のクリエイティブディレクション、インターナルコミュニケーションのプロデュースなど、幅広く手掛けています。

ブランディングとはよく言うけれど、そもそもブランドとは何なのか、どうすればブランディングができるのか、はっきり分かっている人は少ないのではないでしょうか。そこで石澤さんに、ブランディングについて様々な角度からお話をうかがいました。

ブランドの定義とは

―かつて「ブランド」という言葉は、高級ブランドのみを指していたように思います。ところが現在は、幅広い企業や商品、サービスにも使われるようになりました。ブランドの定義とはそもそも何なのでしょうか。

―石澤
それが、難しいんですよね。
2007年ごろにイギリスからブランドの定義をしようとの発議があり、国際会議が持たれたことがありました。ブランドを定義することで、ブランド資産を金額に換算できるようにして企業価値に含めようという話だったのですが、結局決まらなかったんです。

日本からは石澤さんが代表として経済産業省に呼ばれ、参加されました。ただ、3年ほどかけて世界を回ったものの、ブランドを定義するには至らなかったそうです。

―石澤
僕はブランドとは何かと聞かれたとき、 “社会の人々やお客様がブランドの名前やマークを見たときに、ポジティブに気持ちが動くもの”だとシンプルに答えています。
「グローバルWiFi」のブランドロゴをデザインした際には、ビジョンの佐野社長とも話し、ロゴを見たときに安心できること、瞬間的にこれがWi-Fiのスタンダードだと分かることを一番の目的としてつくりました。

安心できる、スタンダードだと分かるというのは、たしかにポジティブな印象です。それがブランドの価値になっていくのですね。

野望を考えれば、道筋が見えてくる

―ブランドを確立する、つまりブランディングしていくためには、まず何から始めればいいのでしょうか。

―石澤
よく僕が言うのは、夢とスタイルを見つけることです。
ブランドの主体となっている企業の方々には、それぞれ夢があるはずです。その夢を一貫したスタイルで伝えていくことによって、それがブランドとして社会の人々や社員の中に根付いていくんです。

たとえばスターバックスは、サードプレイス(第三の場所)を提供することを企業として掲げています。つまり、単においしいコーヒーを飲んでもらうためにお店を出しているのではなく、サードプレイスを提供するためには心地よい場所とおいしいコーヒーがあった方がいいとの考えからお店をつくっている。

このように、サードプレイスを提供するというスタイルを一貫して伝えていくことが、ブランディングにつながるのだといいます。

―石澤
ブランドを立ち上げるときのひとつのテーマは課題の発見です。
もうひとつ、僕が必ずお聞きするのは、「野望が何か」ということです。
夢は何かと聞くとほわっとした答えになりますが、野望は何かと聞くと、具体的なものが浮かんできませんか。

たしかに夢と言われれば、たとえば「お金がたくさん欲しい」などとふんわりしたイメージが浮かびます。でも野望と言われると、「本を書きたい」などと途端に具体的になるようです。

―石澤
そうですよね。そうすると、出版社に売り込みに行くといった道筋が見えてきます。
野望を突き詰めると、道筋が見えやすいんです。ブランディングをする際には、向かう先と、そこまでの道筋をセットとして見出すことが重要です。

ブランディングに欠かせないのは、2つのコンセンサス

―では、実際にブランドを形作っていくためには、どうすればいいのでしょうか。

―石澤
ブランドづくりは、2つのコンセンサスだと考えています。
まずは、ブランドをつくる主体となる企業の人々が、うちはこういう会社だと何となく合意ができること。そのうえで、社外の人からも同じような認識を持ってもらえることです。

たとえば、ビジョンは“世の中の情報通信産業革命に貢献する”という経営理念を掲げています。その思いをまずは社内に浸透させて全員がその方向を目指し、次に社外の人からも「ビジョンは情報通信産業の革命を推進している会社」だと思ってもらえれば、それがブランドになっていくわけです。

―石澤
その会社が提供する商品やサービスも、その野望に向かう流れの一角にいなければおかしなことになります。
つまり、会社の社員、商品、サービスもすべて一つの方向に向かっていく必要があるんです。

ビジョンのサービスである「グローバルWiFi」を使うと、海外にいても国内と同様に不自由なくインターネット通信が使えるようになります。これは、経営理念にしっかり沿ったサービスだと言えます。

―石澤
もし、ビジョンの佐野社長がいきなりサッカーチームをサポートするという決断をしたとしても、それが経営理念や会社のコンセプトに合っていさえすれば、コンセンサスは得られるでしょう。

社内外でコンセンサスを得るためには、目指す方向を伝えていく必要があります。しかし、伝えて浸透させていくということはとても難しいこと。困ったときには、石澤さんのようなスペシャリストのお力を借りたいものです。

コンセプトの切り口によって、ブランドのつくり方は変わる

―これまで石澤さんが手掛けられてきたブランディングの具体例をお聞かせください。

―石澤
化粧品メーカーのA社から、「B」というオーガニック化粧品のブランドを立ち上げたいので手伝ってほしいとお声がけいただいたことがありました。

それが7年ほど前のこと。すでにオーガニック化粧品は珍しくなかったため、単純にオーガニックだというコンセプトだけで売ることはできませんでした。

また、A社の名前は隠して打ち出していくとの方針もあり、まったく新しいコンセプトを考える必要があったそうです。

―石澤
そこで僕が打ち出したのは、“社会で生きる女性を応援するライフスタイルブランド”というコンセプト。
それに従って表参道のコンセプトショップを早い段階で立ち上げ、化粧品はもちろん、サプリメントの販売や、マッサージなども提供しています。

もとはオーガニック化粧品を売りたいというところから始まりましたが、掲げたコンセプトによって「B」はただのオーガニック化粧品ブランドではなく、女性を応援するブランドになりました。さらに、サプリメント、マッサージと展開していくことで、女性を応援するブランドとしてのストーリーを築き上げていったのです。

社員の方々は今でも新しい商品やサービスを提供する際に、それは「B」らしいかと自問自答するのだそう。それが一貫したスタイルにつながっているのですね。

最後に、石澤さんの野望を聞いてみました。

―石澤
ブランディングの考え方が浸透して、社会が良くなっていけばいいなと考えています。
個人個人が社会の成長を担うという視点から自分の目指す姿や果たすべき役割を意識して、行動する。そして、それをお互いに認め合える社会になれば、過剰にギズギスしたりすることも減るかもしれないし、困っている人を素直に助けられるようになるかもしれない。

今の日本には「こうなりたい」と声高に言えない雰囲気がありますが、それを意識すれば同じくなりたい自分を目指す人を認められるようになり、世の中が良くなっていくのではと思っているんです。

たしかに、社会生活における自分の役割を決め、それに沿った行動をしていけば、世の中の歯車はもう少しうまく噛み合うのかもしれません。セルフブランディングとして、私も意識してみたいと思いました。

石澤さん、お忙しいなかありがとうございました。

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