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201811.05

日本も他人事ではない「オーバーツーリズム」持続可能な観光のために企業ができること

近年、急激な観光客の増加による「オーバーツーリズム」の問題が、世界的に顕在化してきています。

オーバーツーリズムとは、観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せること。具体的な問題としては、街中の人混みや交通渋滞、トイレの不足といったインフラの問題、騒音やゴミの問題、環境破壊などと、それらを原因とした地域住民と観光客とのトラブルが挙げられます。日本では「観光公害」という表現が使われることもあります。

この問題に直面している各国の観光地は、「持続可能な観光」の在り方を模索し始めました。地域のためはもちろん、継続的なビジネスを成り立たせるためにも、この「持続可能」という視点が重要になってきています。
今回は、日本や世界におけるオーバーツーリズムの現状や、国内の民間企業が積極的にかかわる持続可能な観光への取り組み事例を見ていきましょう。

オーバーツーリズムが地域住民・観光客・ビジネスに及ぼす影響


オーバーツーリズムが及ぼす影響として特に取り上げられるのが、地域住民に対する不利益です。もともと観光というビジネスは、その地域の経済活性化の意味合いも強いもの。その地域の主役ともいえる地域住民にとっての悪影響のあるものであってはなりませんよね。

実際、スペインのバルセロナでは、年間で住民人口の5倍以上の観光客が押し寄せるなかで(2016年時点)、住民による反観光デモまで起こるようになってきているといいます。

加えて、観光客の観光体験が悪化してしまうという影響もあります。
確かに、「せっかく観光地を訪れたのに混雑していて楽しめなかった」「観光地がゴミだらけで不快だった」などという印象が残るのは残念ですよね。

ビジネスに及ぼす影響も少なくありません。オーバーツーリズムが原因で観光客の満足度が減少すれば、観光客が減り、その分収入が減ることが予想されます。観光資源である文化遺産や自然が損なわれれば、その地域における「観光」そのものが成り立たなくなってしまうでしょう。

世界におけるオーバーツーリズムへの注目度は高まっており、2018年4月には、イギリスの「The Telegragh」紙において、「オーバーツーリズムを2018年のワード・オブ・ザ・イヤーにすべき」という内容の記事が掲載されたほど。

日本でも、2018年7月には観光庁が「持続可能な観光推進本部」を設置。同10月には、同庁が全国の自治体に対して初めて、観光公害に関する実態調査をおこないました。
国土交通省の「観光白書」(平成30年度版)によると、2017年における訪日外国人旅行者数は2,800万人以上で、2012年からの5年間で3.4 倍にもなっています。オーバーツーリズムは、日本においても、看過できない問題になってきているといえるでしょう。

観光客を制限するだけではない。民間企業が関わる持続可能な観光の取り組み


このようにさまざまな影響を及ぼすオーバーツーリズムを解消し、持続可能な観光を目指す動きは、世界中で見られるようになってきています。

オーバーツーリズムの原因とされているのは、格安航空会社(LCC)の普及や、新興国を中心とした中間層の拡大など。これらを見ると「持続可能な観光を目指す」とはいっても、原因に直接アプローチしてオーバーツーリズムを解消するのは難しそうですよね。

そこで、海外でよくおこなわれている対策が、行政による観光客の制限です。
たとえば、フィリピンのボラカイ島では2018年4月に一時的に島自体を閉鎖。スペインのマヨルカ島では、観光客の過度な流入を防ぐ目的で、2018年7月から民泊を禁止しました。

ただし、観光客を単に制限するだけでは、地域の経済が停滞してしまう可能性もあります。以下では、持続可能な観光のため、民間企業も積極的にかかわりながらオーバーツーリズム問題の改善に向けて取り組んでいる国内の事例をご紹介します。

「手ぶら観光」の推進


関西観光本部では2017年12月から、訪日客向けに宅配便の利用方法を説明する「手ぶら観光」ガイドブックを配布しています。
旅行中の荷物を観光客自身で持ち歩かず、宅配を使って宿泊施設や空港へ運ぶ「手ぶら観光」を推進することが目的です。

ガイドブックは、関西周辺地域の観光施設(宿泊施設やお土産店、観光スポットなど)での設置を想定したもので、英語、中国語、フランス語、日本語を併記。ヤマト運輸や日本郵便と連携して作成されていることから、全国の主要都市・観光地までの料金表も記載されています。

手ぶら観光は、観光客の利便性を向上させるだけでなく、オーバーツーリズムの改善にも効果があるとされています。
具体的には、荷物が減ることで観光客の移動範囲が広がり、観光客を分散できたり、観光客が大きなスーツケースを電車やバスなどに持ち込まなくなることで、混雑緩和につながったりといった効果が期待されています。

京都における3つの観光客分散化の取り組み


2016年には5,500万人以上の観光客が訪れている京都。日本でも特にオーバーツーリズムが深刻な地域です。京都市では、観光客の一極集中を防ぎ、分散させる取り組みをおこなっています。

観光客の分散については、

・時間の分散
・季節の分散
・場所の分散

の3つが重要だといわれています。京都では「時間の分散」として、寺社と協力した「朝観光」(開館時間を早める、朝だけのイベントを開催するなど)を推進。
「季節の分散」では、夏の「青もみじ」をアピールして、春の花見の時期や秋の紅葉の時期以外での観光を促しています。
「場所の分散」では、2018年3月、京都市がエクスペディアグループと連携して、比較的混雑の少ない高雄エリアの魅力を、海外ユーザー向けのウェブメディアで発信しました。

観光客を減らすのではなく、観光地のキャパシティを広げるのが「分散」の発想です。地域の魅力がどんどん発掘されて、新たなビジネスが生まれる可能性もある、期待度の高い解決法だといえそうです。

おわりに

オーバーツーリズムの問題は、ビジネスとしての観光の持続可能性のために、また日本全体の経済が今後も継続的に発展していくために、企業も真剣に考えていく必要があります。

旅行や観光に直接関係のない業種であっても、オーバーツーリズムの解消のために取り組めることはあるかもしれません。これから一層国際化していく社会のなかで、一度考えてみたいですね。


※参考URL
観光白書 – 国土交通省
オーバーツーリズム (インバウンド観光用語) _ ジャパン・ワールド・リンク
過熱するインバウンドに警鐘、「オーバーツーリズム」から考える観光の未来〜観光はマネジすべき時代へ _ AMP[アンプ] – ビジネスインスピレーションメディア
持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究 国土交通省 国土交通政策研究所
Dear dictionaries, this is why ‘overtourism’ should be your 2018 word of the year
オーバーツーリズムに対策 観光庁、「持続可能な観光推進本部」設置 – 観光経済新聞
東京新聞_交通混雑、民泊トラブル… 「観光公害」初の実態調査_社会(TOKYO Web)
外国人観光客が少なくても、知っておきたい「オーバーツーリズム」とは? _ ジャパン・ワールド・リンク
フィリピン、リゾート地ボラカイ島を閉鎖 最大6カ月間  _日本経済新聞
民泊仲介お断り スペイン・マジョルカ島:朝日新聞GLOBE+
観光施設向け“手ぶら観光・多言語利用ガイドブック”セットの申込受付を開始します
外国人の「手ぶら観光」へ宅配便の活用呼びかけ ガイドブックを宿泊施設などに配置 関西観光本部 – 産経WEST
外国人観光客の分散化に向けた取組について 京都市
京都観光の現状と取組 京都市

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