201906.10

D2Cはなぜ注目される?アパレル業界の常識を覆すビジネスモデルを解説

D2Cは、2010年ごろにアメリカで登場したビジネスモデルです。特にアパレル業界のトピックスとして目にしたことのある人もいるのではないでしょうか。

とはいえ、一ユーザーとしてD2C企業を見ても、既存のアパレル企業・ブランドとの違いはなかなかわかりにくいかもしれません。

今回は、D2Cが注目される理由や背景について、事例を交えながら解説します。

D2Cが注目される背景~革新的なのは「直接販売」だけではない


D2Cとは、「Direct to Consumer」の略です。具体的には、メーカーやブランドが、自社で企画・生産した商品を、流通業者を介することなく、自社ECサイトで直接消費者に販売するビジネスモデルを指します。

「自社開発の商品を直接消費者に販売する」という方法自体は、たとえばWEB上でデジタルサービスを提供するIT企業などでは、すでに一般的に採用されていますよね。これに対してD2Cは、ファッションアイテムや生活用品など、実体のある商品を扱うメーカー・ブランドのビジネスモデルである点で新奇性があります。

中でもアパレル業界では、販売に際して卸売業者や販売店を通していたというだけでなく、企画・生産についても、一部またはすべてを外部委託するODM(Original Design Manufacturing)・OEM(Original Equipment Manufacturing)の仕組みが広く採用されてきた経緯があります。そのため、D2Cモデルがいっそう革新的なものとして映るのではないでしょうか。

D2C企業の3つの特徴~ユニクロやEC限定ブランドとの違いとは

とはいえ、最近のアパレル業界では、ユニクロやGAPなど、自社で企画・生産した商品を直営の実店舗で販売するSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)も存在します。また、「BAYCREW’S STORE」(ベイクルーズ)や「WORLD ONLINE STORE」(ワールド)など、大手アパレル企業が自社ECサイトを運営していたり、その中でEC限定ブランドを展開していたりもしますよね。

これらにはないD2C企業の特徴は3つあります。

1つ目は、ECをメインの販売チャネルとしていることです。実店舗がある場合も、顧客とのコミュニケーションに特化した「展示場」とするのが基本で、販売は行っていません。

2つ目は、商品の種類をごく少数に絞っている点です。在庫のリスクを低減しながら、アイコンアイテムをしっかり設定することで強いブランド力の構築を目指しています。EC限定のアパレルブランドは数多くありますが、あえて少数精鋭の商品で勝負する例はそれほど多くありません。

3つ目は、SNSを顧客との対話の場として重視している点です。新商品やキャンペーン情報などを一方的にPRするのではなく、コメント内容を積極的に、そしてスピーディに商品開発やマーケティング施策に反映させています。コアなファンからのフィードバックは、膨大な購買データからも得られないユニークな商品開発のヒントを与えてくれることもあるようです。

D2Cはビジネスのあり方としてユニークであると同時に、その商品を購入する消費者にとってもこれまでにはない体験を提供してくれるものだといえそうです。

D2Cモデルが企業を強くする仕組み~コスト削減以上のメリット

D2Cモデルのメリットには、次のようなものが挙げられます。

●コスト削減
仲介業者に支払っていた費用や、実店舗を運営するための固定費(人件費、テナント料など)を削減できます。その分、商品の価格を下げたり、商品やマーケティング施策を改善したりすることが可能です。D2C企業の提供する商品で高品質・低価格のものがよく見られる理由はここにあるといえるでしょう。

●効果的なブランディング
企業・ブランドのビジョンを直接、じっくりと顧客に伝えられます。実店舗がメインの販売チャネルだと、顧客はあえてWEBサイトなどを訪れない限り、そのブランドに込められた思いにはなかなか触れられないですよね。これに対して、D2C企業では、顧客が自社ECサイトで買い物をする過程で、自然とブランドのストーリーに入りこめます。その結果、ビジョンに共感できるコアなファンが集まりそうです。

また、顧客との関係構築の機会を逃さない点も重要です。たとえば、ECモールで買い物をしたとき、商品を提供するメーカーの印象より、商品を購入したECモールの印象のほうが強くなることがありますよね。D2Cモデルはこうした顧客との関係構築の機会損失を防ぎ、効果的にブランディングを進めています。

●顧客データの収集とスピーディな活用
自社のECサイトを通じて顧客データを独自に収集できます。サイトの滞在時間や離脱率などのデータを直接収集できるので、スピーディにマーケティング施策に反映できそうです。

いずれも、ビジネスの成功に直結する要素として納得がいきますよね。

先進事例に見る成功のヒント~D2C企業はいかに顧客の心をつかんだか


D2Cモデルは、ECやSNSを活用するという手軽なイメージがある一方、商品の質やブランディングに対してストイックで、ハードルの高い印象もあるかもしれません。実際にD2Cモデルを採用して成功している企業・ブランドの事例から、実践のヒントを探ってみましょう。

●Warby Parker
2010年にアメリカの大学生4人が創業した眼鏡ブランドで、D2Cの先駆けといわれています。

当初は10~20種類に商品を絞って展開。ハイクオリティな商品をリーズナブルに購入できることから、ミレニアル世代を中心に支持を集めました。SNSを積極的に活用しており、2019年現在、Facebookページの「いいね!」は約75万件、Instagramのフォロワー数は51万人にも上っています。2015年にはアメリカのビジネス誌『Fast Company』の「Most Innovative Companies」で、グーグルやアップルを抑えて1位を獲得しました。

「学生時代に眼鏡が高すぎて買えず、苦労した」という創業のストーリーにも親近感がわきますよね。

●Casper
2014年に創業されたアメリカのマットレスメーカーです。当初のマットレスは1種類のみというシンプルさが顧客に受け入れられ、リリース初月に売上約1億円、2年間で約100億円の売り上げを達成しています。

ブランディング戦略として、「マットレスメーカー」であることを押し出すのではなく「睡眠を中心としたデジタルファーストブランド」を銘打ち、おしゃれでスタイリッシュな世界観を作っているのも特徴です。

また、InstagramやTwitterでのインフルエンサーを活用したPRを積極的に行っており、Instagramで約88万もの「いいね!」を獲得した投稿もあります。

2社ともに、低コストでスタートしながら、今までになかった商品展開やブランドの世界観を打ち出すことで、新しいものに敏感な顧客をうまく獲得できているように思えますよね。

おわりに

業界の仕組みを再定義し、ビジネスの新しい勝ち筋を示したD2C。今後は、アパレル以外の業界にもいっそう広がっていきそうです。国内では、まだそれほど際立ったD2C企業の事例が見られませんが、動向に注目したいところですね。

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