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201902.18

国際観光旅客税(出国税)が適用開始。海外旅行者やインバウンドへの影響は?

2019年1月7日から、日本で国際観光旅客税が導入されました。
海外旅行をする日本人にとっても、日本から自国へ帰る訪日外国人にとっても負担が増えることになりますが、税額や徴収方法はどのようになっているのでしょうか。
導入の背景や税収の使途、想定される影響などと併せて見ていきましょう。

国際観光旅客税の概要~税額1,000円がチケット代に上乗せ、観光振興施策の財源に


国際観光旅客税は、日本からの出国に対して課される税で、「出国税」とも呼ばれています。
納税義務のある「旅客」は、観光旅客だけでなく、ビジネスや公務、留学、医療などを目的とした旅行客も該当。日本人も外国人も納税する義務があります。

税額は出国1回につき1,000円で、徴収方法は船や航空機のチケット代に税額分が上乗せされる形が基本です(プライベートジェットを利用した場合は税関で納税)。
入国後24時間以内に出国する乗り継ぎや、天候などを理由にした緊急着陸、2歳未満の旅客は課税対象外となっています。

導入の目的は、国内の観光基盤を拡充・強化するための安定的な財源を確保することです。
訪日外国人旅行者は2012年~2017年の5年間で3.4倍になるなど、近年になって大幅に増加。
さらに2020年の東京五輪、2025年の大阪万博も控えるなか、政府は2020年に訪日外国人旅行者4,000万人、2030年に6,000万人といった目標を掲げています。
これらを踏まえ、インバウンドの受け皿整備が急務になっていることが、今回の新税導入の主な背景です。税収は年間で約430億円を見込んでいるといいます。

税金の使途は「ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備」「我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化」「地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」の3分野。
たとえば、2019年度予算では、入国審査用顔認証ゲートの整備のほか、公共交通機関や観光地における多言語対応・無料Wi-Fiサービス整備・キャッシュレス決済対応などへの支援、DMO(観光地域づくりのかじ取り役を担う法人)への支援といった施策が計上されています。

特に無料Wi-Fiや多言語対応については、不便を感じている訪日客が多いことが調査でもわかっており、財源の確保でいっそう対策が進められるといいですよね。
2019年度予算ではインバウンド対策に取り組む飲食店や小売店も補助金の対象になっているため、各地の観光地も助かりそうです。

海外でも出国税の事例は多数!オーストラリアは40年以上前に導入

国際観光旅客税と同様の税制は、すでに海外の多くの国で導入されています。以下で主な事例を見てみましょう。

●韓国
・名称:出国納付金
・導入時期:1997年
・税額:航空旅客10,000ウォン(約960円)、船舶旅客:1,000ウォン(約100円)
・年間徴収額:2,600億ウォン(約250億円、2015年実績)
※1ウォン=0.096円で計算。

●オーストラリア
・名称:出国税
・導入時期:1978年
・税額:60オーストラリアドル(約5,230円)
・年間徴収額:9億オーストラリアドル(約785億円、2015年実績)
※1オーストラリアドル=87.22円で計算

いずれも税収は観光振興に使われており、日本がモデルとする形になっていますよね。40年以上前に導入しているオーストラリアのケースは、当時はかなり先進的だったのではないでしょうか。

この2国のほか、ペルー(約3,330円)、メキシコ(約3,320円)、アルゼンチン(約1,100円)、香港(約1,680円)、タヒチ(約2,100円)でも、出国に対して税が課せられています。
税額だけ見ると、日本はそれほど高いほうではないのかもしれませんね。
また、出国税はチケット代に含まれているケースが多いことから、あまり負担感もなく、知らず知らずのうちに納税している人も多そうです。

免税制度拡大と併せ、インバウンドへの影響は少ないという予想も


観光振興を目的とした国際観光旅客税ですが、チケット代が実質1,000円増となると、逆にインバウンドの妨げになってしまわないかが懸念されるところです。

特に昨年の2018年は日本で大規模な災害が続いたことなどから、日本への旅行計画を中止した外国人が多いという調査結果も出ています。その翌年での新税導入となり、タイミングとしてどのような影響をもたらすかが一部で不安視されています。

一方で、インバウンドへの影響は少ないのではないかという予想もあります。
その理由のひとつが、訪日外国人旅行者に向けた免税制度の拡大です。
2017年7月には、消耗品とそれ以外の一般物品の購入金額を合算して免税申請できるようになったほか、2019年7月には申請を行ったイベントの臨時店舗でも免税での購入が可能になります。

免税制度を利用できる機会が増えたことで、金銭的な負担がプラスマイナスゼロになる可能性もあるということが海外でも周知されれば、今回の新税に起因するインバウンドの減少は避けられそうですよね。

日本人にはメリットの見えづらい税制。税金の使途に引き続き注目を


日本においても、国際観光旅客税導入によるさまざまな影響があるとされています。

まず、税額が一律の国際観光旅客税は、安く海外旅行をしたい人ほど負担感が大きくなるというデメリットがあります。
LCCでチケットを取る人にとっての1,000円と、フルサービスキャリアのビジネスクラスで海外旅行をする人の1,000円では、意味合いが異なってきますよね。
日本で行われたアンケートでは、国際観光旅客税を「高い」と感じている人が64.2%に上りました。

また、家族連れで海外旅行をする場合、国際観光旅客税は人数分かかるため、1世帯当たりの負担額が大きくなってしまいます。

さらに、日本国内の旅行会社への影響も少なくありません。
徴収代行のためのシステム改修費用や、対象者へ制度を説明するための作業負担・人件費などがかかり、前者については3,000万~5,000万円かけるケースもあると言われています。

何より、日本人にも負担がかかるにもかかわらず、税収は主に訪日外国人向けの施策に使われるため、日本人にとっての直接的なメリットが見えづらいのが今回の新税の課題になっています。
最終的には訪日観光客が増えて、日本人も経済的メリットを得られるよう、税金が適切に使われているかどうかに注意しておくことが重要です。

おわりに

国際観光旅客税は一見、金銭的な負担が目についてしまいますが、長い目で見れば日本全体の経済活性化につながるはずです。
私たちが海外に旅行することも回り回って日本経済のためになると考えれば、出国時に払う1,000円はそれほど高くないのかもしれませんね。

新税の税金が活用されることで、日本のさまざまな観光地が今後どう魅力を高めていくのか、注目していきましょう。

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