202007.07

テクノロジー時代で生き残るためのDX。先進事例から成功のカギを探る

産業界はもちろん、政府も緊要な課題として掲げるデジタルトランスフォーメーション(DX)。2018年には経済産業省から「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」が公表され、国内での取り組みが拡大してきています。
DXを実践している企業の事例を参照しながら、いかにDXを成功させていくか考えてみましょう。

DXは単なるデジタル化ではない!組織全体の変革が必要な理由


経済産業省によるガイドライン(「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」)では、DXは次のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

単に製品・サービスをデジタル化したり、業務の一部にITツールを導入したりするだけでは、DXを行っているとはいえません。ビジネスモデルや働き方、組織の在り方も含めて、テクノロジーを活用して企業全体を本質的に変革させるのがDXだといえるでしょう。

政府も積極的に推し進めるほどDXの重要性が増している背景には、企業が抱える次のような課題があります。

●これまでにないビジネスモデルを持つ企業が他業界から参入してくるなど、急変するビジネス環境における競争力の強化
●2025 年以降、国内全体で最大12兆円/年の損失を生むと試算されるレガシーシステムから移行する必要性(2025年の崖)
●「モノ消費」から「コト消費」へと変化している消費行動への対応

競争力をつけることはもちろん、甚大な経済損失を避けるためにも、DXは急務であるといえますよね。

DX実践のポイントとは?テクノロジーの導入から社内体制の整備まで


DXの実践において特に重要になるのは、次のようなポイントです。

●最先端のテクノロジーを活用したビジネスモデル・業務プロセスへの転換
IoTやAI、5G、ビッグデータ処理、クラウドといった最新のテクノロジーを積極的に取り入れることで、ビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に改革する必要があります。ビジネスモデルについては、業界の枠を超えた事業領域の拡大も視野に入れたいところです。

●製品・サービス開発工程のスピード化
日々進歩するテクノロジーや、それに伴う生活の変化に素早く対応しながら製品・サービスを提供し続けられるよう、開発工程をスピードアップさせることも欠かせません。例えば、開発工程を短期のサイクルで回し続けるアジャイル開発などが有効です。

●社内体制の整備
経営トップのコミットメントや専門組織の設置など、社内における推進体制の整備も不可欠です。電通デジタルが実施した「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2019年度)」でも、DXで成果を上げている企業の93‬%が「経営トップによるDXのコミットメントがある」と回答、また89%が「DX専門組織を設置している」と回答しています。

【事例7社】先進企業に学ぶDX成功のヒント


では、実際にDXに成功している企業は、新たなビジネスモデルや業務プロセスをどのように生み出しているのでしょうか。国内外7社の事例から、DXで成果を上げるためのヒントを探ってみましょう。

●ロールス・ロイス(製造業、イギリス)
航空機用エンジンの製造・販売・メンテナンスを行うロールス・ロイスでは、時間あたりの出力でエンジンをレンタルする「Power By The Hour」というビジネスモデルを展開。エンジンにセンサーを取り付けてデータを取得し、IoT機器で解析して、エンジンの出力や稼働時間を算出する仕組みによって成り立っています。「エンジンは製品として販売するものだ」という常識を覆しているといえますよね。
さらに、これらのデータは、整備のタイミングを算定したり、交換部品や整備士リソースを管理したりする際にも活かしているといいます。

●大林組(建設業、国内)
大林組は2018年以降、NEC、KDDIと共同で、5Gや4K3Dモニターといった技術を採用した遠隔施行システムの実証実験を行っています。Wi-Fiを利用する従来の遠隔施行システムでは、映像の解像度の低さや通信の不安定さといった問題が生じていましたが、新たなシステムはこれらを大幅に解消。災害復旧対応を行った実験では、作業効率が15%~25%改善し、2020年2月には、遠隔での道路造成工事の実証に成功しました。
建設現場の安全を確保できるのはもちろん、担い手の高齢化や労働力不足といった課題の解決にもつながりそうです。

●Best Buy(小売業、アメリカ)
ECの普及を背景に、一時は純利益が90%も減少したという大手家電販売店Best Buyでは、2012年からDXを推進。顧客とのさまざまなタッチポイントで顧客体験(CX)データを取得・蓄積し、AI分析した結果、実店舗での販売とWEBサービスを掛け合わせたユニークなビジネスモデルを確立するに至っています。例えば、顧客はWEBで注文した商品を店舗で受け取り、帰宅する頃には、商品のセットアップなどを解説したメールを受信することができるようになっているとか。
こうした取り組みを経て、同社は2018年に「持続可能性が最も高い米企業100社」の1位を獲得。さらに、家庭内の電化製品のトラブルを、他社で購入したものも含めてサポートするサービスや、IoT、AI技術による高齢者の見守りサービスなど、新たなビジネスも創出しています。

●セブン銀行(金融業、国内)
セブン銀行ではキャッシュレス化の進展を見据え、これまで現金を引き出すだけだったATMを、総合的なサービスプラットフォームへと転換するべく、最新のATMを開発し、店舗への設置を進めています。例えば、顔認証システムを搭載し、口座開設時などの本人確認がATMでできるようにするほか、将来的にはQRコード決済やBluetooth通信の機能によって、シェアリングサービスの支払いやチケットの発券などもできるようにしていくといいます。ATMの使い方だけでなく、コンビニの在り方も変化していきそうですね。
さらに、開発プロセスでも、実物型模型を使った従来の方法からVRを使ったアジャイル開発へ移行するなど、最新の技術を駆使している点も見逃せません。

●Shake Shack(飲食業、アメリカ)
日本国内にも店舗を持つハンバーガースタンドShake Shackは、オンライン注文プラットフォームと店頭のキオスク端末を展開。注文の合理化を実現するとともに、レコメンドや顧客エンゲージメントに合わせたサービス提供など、売上の向上につながる機能も搭載しています。また、デジタル化しても顧客体験を悪化させないよう、徹底的なCX分析をもとに、注文から受け取りまでストレスなく行える仕組みを構築しているのも特徴です。一連の取り組みの結果、モデルケースとなった店舗では、人件費の削減に加え、顧客単価15%増加を達成したそうです。
DXによってブランド価値を下げることなく、さらに向上させるという視点は持っておきたいところですね。

●トライグループ(教育、国内)
家庭教師事業で知られるトライグループでは、2015年という早い時期に映像授業サービス「Try IT」をリリースしています。スマートフォンやタブレットを通じて、受けたいオンライン授業をいつでもどこでも、永久無料で視聴できるという驚きのサービス。また、授業視聴中にスマホを振れば、1回500円で家庭教師に質問することもできます。サービスの設計においては、生徒の属性や学習のタイミング、学習スタイルなどの行動調査データを活用したそうです。
現在では、世界で100万人以上が同サービスを利用しているとのこと(2020年現在)。教育の地域格差や経済格差といった社会課題の解消を理念に掲げたサービスであることも支持を集める要因になっているのかもしれませんね。

●リンクアンドモチベーション(コンサルティング業、国内)
リンクアンドモチベーションは2016年、組織改善クラウドサービス「モチベーションクラウド」をリリース。これまでのHRTechが採用や労務、評価など、従業員個人の人事データの管理にフォーカスしていたのに対し、同サービスは組織データの管理・運用に特化した国内初のSaaSです。コンサルティング事業で培ってきたノウハウやデータがサービス構築に活かされています。
リリース後の反響は大きく、2018年度グッドデザイン賞では「グッドデザイン・ベスト100」にHRTechとして初めて選出。SaaS事業へとビジネス領域を拡大することで、労働集約的なコンサルティング業界の新たな可能性を切り開いたといえるでしょう。

DXは一部の企業にしかできない「特別なこと」ではない

DXを進めていく上では、これまでのビジネスモデルや業務プロセスの常識を覆すことが求められます。しかし、成功している企業の多くは、何もないところから斬新なアイデアを生み出しているわけではありません。紹介してきた事例にもあったように、AIやIoTなど最新の技術を活用して顧客データを取得したり、過去のデータを分析したりして初めて、ビジネスの変革を実現している企業も多くあります。そう考えると、DXは一部の企業だけにできる特別なことではなく、あらゆる企業が取り組めるものだといえるのではないでしょうか。

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※参考URL
経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
経済産業省が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か? – ビジネスWebマガジン「Future Stride」|ソフトバンク
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?言葉の意味を事例を交えてわかりやすく解説 _ 株式会社モンスター・ラボ
「70%が着手」と本格化進む日本企業のDX成果創出のカギは経営トップのコミットメント _ プレスリリース _ 電通デジタル
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