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202003.02

「2025年問題」に立ち向かう介護市場。業界最大級老人ホーム検索サイトの立ち上げからこれまで、そして未来

不動産・住宅情報サイトなどを運営する株式会社LIFULLは、2006年から社内で新規事業提案制度「SWITCH」を開始し、100社の子会社をつくる方針を掲げています。

老人ホーム・介護施設の検索サイト「LIFULL介護」を運営する株式会社LIFULL senior(ライフルシニア)は、この「SWITCH」から誕生した子会社のひとつ。「LIFULL介護」が業界最大級のサイトに成長するまでにはどのような苦労があったのか、また団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」が話題となり、介護の仕事を担う人材の減少や社会保障費の増加が課題視されている今、LIFULL seniorはこの課題にどう立ち向かっていくのか、LIFULL senior代表取締役 泉雅人氏にうかがいました。

事業設立のきっかけは、社員の実体験から

―LIFULL seniorの事業内容をお聞かせください。

―泉
メインの運営サービスは、老人ホームや介護施設の検索サイト「LIFULL介護」です。親会社であるLIFULLの新規事業提案制度「SWITCH」で提案され、2008年に新事業として「LIFULL介護(旧称:HOME’S介護)」が誕生しました。その後2015年に子会社化しております。

事業提案のきっかけは、ひとりの社員の実体験からだといいます。

―泉
その社員は、ある日突然自分のおばあさんの老人ホームを探さなければならなくなりました。ネット検索すれば見つかるだろうと思ったようですが、その頃ネット上に介護に関する情報がほとんどなかったと聞いております。

そのため、役所や地域の民生委員、ケアマネジャーなどから断片的な情報を得て、自らリストを作り、一件一件調べて、なんとか見つけることができたそうです。そういった苦労をした経験から、事業が生まれました。

―泉
ただ事業化してからしばらくは、小さなサービスのままでした。というのも、老人ホームを探しているのは、入居者の子どもにあたる50~60代の方。今から10年ほど前にその年代の方たちがネット検索を多用していたかというと、そうではなかったんですよね。

こうして立ち上がった「LIFULL介護」の事業に、泉さんはLIFULLに入社した2010年から参画されたそうです。

掲載施設数No.1を勝ち取るまで

―現在は掲載施設数No.1と、業界最大級のサービスになられました。どのように成長させていったのでしょうか。

―泉
大事なのは、情報の幅と深さを広げることだと考えています。幅というのは情報の網羅性で、一社一社回って営業したり、公的な情報を転載したりして、数を増やしていきました。
また、深さというのは、一つひとつの情報の精度やボリュームを上げること。こちらも取引先とコミュニケーションし、情報量を増やしていきました。

情報量が充実すると同時に、利用者数も増え、加えて数年前から50代以降のネット利用率が上がり始めたことも、利用者増の要因になったのだそう。

―泉
今後は、介護情報をネットで探すということが当たり前の時代になっていくと思います。取引先の企業様からも、入居者募集をするサービスとして第一にお考えいただけるほどのご評価をいただいています。

超高齢化社会を前に、LIFULL seniorが見据える展望

―介護の業界では、「2025年問題」として、2025年に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になることによって、社会保険費の増加や介護者の人材不足などが深刻化すると言われています。LIFULL seniorでは、この問題をどう捉えておられますか。

―泉
人材不足という点においては、海外からの受け入れも視野に入れ、人材の数を増やさなければならないと考えています。それに加え、介護の仕事がより効率化できるよう、テクノロジーの開発も進めるべきです。私たちもそこに関わっていきたいと考えています。

では、社会保険費の増加については。

―泉
介護保険は、国からの税金と被保険者からの保険料で運営されています。介護サービスを運営している事業者さんの収入元は、主にこの介護保険から成り立っています。
しかし、国の財源が今後大きく増加することは考えにくく、介護保険に頼らなくても収益を上げられるビジネスを生み出す必要があります。僕らも取引先に対して、収益性が高いビジネスを生み出せる仕組みを考えられればと思っています。

日本は、先進国の中でも特に高齢化率が高い国。課題も多い一方で、世界的に見れば、介護産業がとても発達しているそうです。そのなかで高齢化社会の課題を解決するようなサービスを生み出せれば、それが世界標準になる可能性も高いかもしれませんね。

事業化にふさわしい提案のポイントとは

―LIFULL seniorが生まれるきっかけとなった、新規事業提案制度「SWITCH」についてもお伺いさせてください。これはどのような制度なのでしょうか。

―泉
社内の新規事業提案制度で、LIFULLグループの社員なら誰でもエントリーできます。グループのビジョン実現のため、世の中にある課題を解決する自身の事業プランをプレゼンします。受賞したプランには、アクセラレーターと呼ばれるサポーターがつき、二人三脚で案をブラッシュアップしながら、事業化に向けたサポートを受けられる制度です。「こんな課題を解決したい」というアイデアの段階でも、チャレンジできることが特徴です。課題設定さえ合っていれば、あとはそれを解決する仕組みを考えればいいだけだと捉えています。

「LIFULL介護」によって解決したい課題は、老人ホームを探そうと思っても手段がウェブになく、情報を集め、希望に近い施設に入居できるまでに相当の時間と労力がかかるということです。そして今後は、この課題に直面する人が必ず増えていくということが明確でした。

実は泉さんも、アクセラレーターのひとり。そこで、どのような案が事業化に適していると考えているのかも聞きました。

―泉
僕の視点は3つ。課題設定が合っているか、その解決策がビジネスとしてきちんと実現できるか、この先事業として伸ばせそうか。これはどれかひとつが欠けてもダメで、たとえば前者の2つがあっても、事業規模があまりにも小さければ、ビジネスとしては魅力的とは言えません。

社内起業家ならではのプレッシャーがあった

―泉さんは、LIFULL入社前にスタートアップを経験されていますよね。LIFULL seniorの経営において、そのときの経験が役立ったと思われたことはありますか。

―泉
事業をゼロから立ち上げて伸ばしていくという過程は、前にいたスタートアップで一通り経験できたので、介護領域の経験はなかったものの、「LIFULL介護」の事業を手伝ってくれと言われたときにも、どうすればいいかを自分で考えることができました。
また、「LIFULL介護」はユーザーの役に立っていると実感しやすいものだったので、やりがいも感じやすく熱中することができたのだと思います。

実は、新卒のときから「いずれは自分で事業をつくって、世の中に価値を提供できるような社長になりたいと思っていた」という泉さん。最初の就職先を選ぶときも、自分でお金を稼ぐ経験をしたいという視点で、新規事業の営業を選んだそう。

―泉
そうやって自分で未来に点を置いて、そこに向かって進んでみようと思いながら選択をしてきたら、曲がりくねった道ではあったけれど、気づいたらその点にたどり着いていました。

そうやって未来に置いた点に向かって着実に経験を積み上げてきたからこそ、訪れたチャンスを確実に掴むことができたのですね。

最後に、事業を育ててきたなかで、苦労したことを聞きました。

―泉
私は社内起業家なので、事業を立ち上げた初期にLIFULLの環境や人的リソースを活用することができ、非常に恵まれていたと思っています。
しかし一方で、社内起業は主力事業の利益を投資してもらっているため、それを無駄にはできないとプレッシャーを感じることもありました。

社内起業は事業を行ううえで、自分でゼロから始める人よりも恵まれた環境にある反面、そのプレッシャーも大きいのですね。

―泉
たくさんの人が関わっている既存事業に比べ、関わる人が少ない新規事業は心細くもあります。事業をつくるということは暗闇の中を手探りで歩いているようなものですが、僕は信頼できる仲間がいたので、進んでこれたのだと思います。

泉さんが言う“信頼できる仲間”とは、社内で事業を手伝ってくれていたエンジニアやデザイナー、マーケターなどのこと。事業が拡大した今でも、同じ目的を持った優秀な仲間を見つけることが、いちばん大事だと考えているそうです。

泉さん、お忙しいなかありがとうございました。

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