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201911.26

ビジネスで貧困を解決する「マイクロファイナンス」とは?歴史・仕組み・事例を解説

社会課題の解決を事業によって目指すソーシャル・ビジネス。その中でも長く注目を集めているもののひとつが、マイクロファイナンスです。2019年11月には、大和証券グループ本社がミャンマーでマイクロファイナンス事業に参入すると報じられました。

今回は、マイクロファイナンスの歴史を振り返りながら、ビジネスモデルやその有効性について考えていきましょう。

貧困層の経済的自立を促すマイクロファイナンス。先駆者はノーベル平和賞を受賞

マイクロファイナンスとは、貧困層を対象としたきわめて小規模な金融サービス(融資、預金、保険など)のことを指します。

開発途上国では、現在においても企業による雇用機会の少ない地域が多く見られ、自営業や家内労働で生計を立てている人も多くいます。しかし、担保を持たない貧困層は、そうした稼業の元手を得るために銀行から融資を受けることができません。そこでインフォーマルな資金源に頼ってしまうと、金利が100~200%、場合によっては1,000%という法外な利率に設定されることもあり、借金の返済に追われて貧困から抜け出せなくなってしまいます。

こうした問題を解決する手段として現れたのが、貧困層に無担保で少額の融資を行う「マイクロクレジット」です。先駆的な例として知られるのは、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が総裁を務めるグラミン銀行。ユヌス氏は「ソーシャル・ビジネス」の提唱者としても知られています。グラミン銀行のマイクロクレジットは、1970年代に貧困層の経済的自立を促す目的で開始されて以降、その有効性が開発機関やアカデミア、実業界などから広く注目を集めました。

やがて、貧困層の貯蓄形成を支援する「マイクロセービング」や、貧困層が災害や戦争、病気などのリスクに少額の負担で備えられる「マイクロ保険」など、サービス対象が拡大。これらを総じて「マイクロファイナンス」と呼ぶようになりました。

アメリカのNPOであるMicrocredit Summit Campaignのレポートによると、マイクロファイナンスの利用者は、2013年末時点で2億1,000万人超。同NPOに報告されていない小規模の取り組みもあることから、実際にはそれ以上の利用者がいると考えられます。それ以降のデータは公開されていませんが、今ではさらに利用が拡大しているかもしれませんね。

ローン返済率90%以上。マイクロファイナンスをビジネスとして成立させる仕組み

マイクロファイナンスのポイントは、社会的利益だけでなく、利潤も追求するビジネスであること。むしろ、ビジネスとして事業を拡張できるからこそ、マイクロファイナンスは持続可能な開発プロジェクトとになっているといえます。

とはいえ、たとえばマイクロクレジットでは、貸したお金が返済されなければ、ビジネスとしては成り立ちませんよね。グラミン銀行は、次のようなビジネスモデルを構築し、黎明期のマイクロクレジットを成功に導きました。

●まず、血縁関係のない5人でグループを作り、グラミン銀行の考え方や融資のルールなどについて、1~2週間の研修を受ける。その後、口頭試験で誠実さが認められれば、貸付が承認される。
●貸付はグループ内で順番に行われる。はじめに、リーダー(グループ内で選出)以外のメンバーのうち2人に貸付がなされ、それが返済されると次の2人に貸付。それも返済されると、リーダーに貸付がなされ、返済まで完了すれば、ここまでで1サイクル。以上のサイクルを繰り返すことで、与信枠が拡大する。
●貸付は極めて小額かつ短期。返済期間は1週間、または2週間。
●法的な契約を結ばない、信頼関係に基づく融資であり、担保は取らない。信頼関係を構築するために、グラミン銀行のスタッフは借り手の元へ直接赴き、コミュニケーションを通じて状況を把握する。

このビジネスモデルのメリットは、大きく2つあるといいます。

1つ目は、信頼できるメンバーを相互に選んでグループを組むため、きちんと返済できる借り手が選別されること。たしかに、返済しないようなメンバーをグループに入れると、自分が融資を受けられなくなりますから、メンバー選びには慎重になりますよね。

2つ目は、メンバーが互いに監視することで、意図的な返済遅延を防げること。基本的には直接の顔見知りや“知り合いの知り合い”など、比較的近いつながりでグループを組むことになるため、「自分が迷惑を掛けたら申し訳ないし、気まずい」という心理が働くことは容易に想像できます。

この方式は、その後、改善が加えられたものの、現在でもグラミン銀行のビジネスモデルのベースになっています。2017年における同行のローン返済率はなんと99%以上。法的契約も結ばない融資でこの返済率とは、驚きですよね。グラミン銀行以外のマイクロファイナンス機関(Microfinance Institutions 、MFIs)でも、このモデルは広く採用されています。

投資ファンドが重要な資金源に。マイクロファイナンスの持続的成長を支える民間資本

MFIsが金融サービスを提供するためには、その元手なる資金を調達しなければなりません。近年、その資金源として重要になっているのが、マイクロファイナンス投資ビークル(Microfinance Investment Vehicles, MIVs)です。

MIVsとは、先進国の投資家からMFIsへの資金提供を仲介する投資ファンドや投資法人などのこと。当初、NGOとして始まったMFIsの多くは、資金源を民間団体からの寄付金や政府系金融機関からの援助に依存していました。しかし、これらの援助資金には限界があります。そうした中、MFIsが民間市場から資金を調達できる仕組みとして考え出されたのが、MIVsです。

MIVsは1990年代後半から見られるようになり、2000年代には、欧米の大手金融機関や、マイクロファイナンス投資を専門とする運用機関がこれに参入。その結果、多くのMFIsが民間資金を活用できるようになり、事業を持続的に成長させられるようになりました。

中には、事業規模を拡大したのち、NGOから銀行へ業態を変えて預金サービスを展開して、より安定的に財源を確保しているMFIsもあります。メキシコのCompartamos銀行はその代表的な例です。

ただし、利益を重視するファンドや投資家の資金が一部のMFIsに集中するなど、MIVsの仕組みは万全でないことも指摘されています。2010年前後には、インドでMFIsからの借金を原因に自殺する貧困層が相次いだり、ニカラグアで大量の不良債権を抱えたMFIsが経営危機に陥ったりといったことも起こりました。

マイクロファイナンスの登場から約半世紀が経ち、MIVsやMFIsは「社会課題の解決」という根本に立ち返らなければいけないのかもしれません。

おわりに

ソーシャル・ビジネスの原点ともいえるマイクロファイナンス。21世紀になり、テクノロジーが発展したことで、近年では新たな動きも見られるようになっているといいます。企業によるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みも重視される中、引き続きその動向に注目していきたいですね。

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