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202006.22

新型コロナがもたらした、ニューノーマルにおけるビジネスモデルと働き方を考える

新型コロナウイルス感染症の流行が少しずつ収束に向かおうとする中、さまざまなメディアで取り上げられるようになった「ニューノーマル」。
これから訪れるニューノーマルとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。コロナ後にビジネスの在り方や働き方はどう変わるのか、事例を交えながら考えます。

ニューノーマルの考え方とは?社会・経済が元通りにはなれない理由


ニューノーマル(new normal)は、直訳すると「新たな常態・常識」のこと。経済や社会が大きな打撃を受けると、それらに構造的な変化が起こり、事態が収束しても以前の姿には戻れないという考え方です。2008年に発生したリーマンショックの際、アメリカのエコノミストであるモハメド・エラリアン氏によって提唱されました。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック渦中にある現在では、コロナ収束後の経済・社会の在り様として、このニューノーマルが再び話題に上るようになっています。ソーシャルディスタンシング施策や都市封鎖(ロックダウン)などの感染拡大防止措置が講じられたことで、世界経済は深刻なダメージを受けています。そもそも経済復興までにも時間が掛かると見られていますが、たとえ復興したとしても、コロナショック前の状態には戻れないというのが、ニューノーマルの考え方です。

例えば、上記のような感染拡大防止措置は、今後も長期的に続くと予測されています。

さらに、感染拡大の第二波・第三波が来る可能性も否定できません。これまでには想定していなかったようなリスクにも備えつつ、再度感染が拡大した場合でも対処できるレジリエンス*管理をしていくことが、社会的に求められるようになるでしょう。

*レジリエンス:困難な環境・状況に適応できる強靱さや回復力

ニューノーマル時代のビジネスはどう変わる?ビジネスモデルから働き方まで


ビジネスにおいては、ニューノーマルの中で次のような変化が起こると考えられています。

【ビジネスモデル】接客やイベント関連ビジネスはシャットイン経済も視野に

多数の人がひとつの場所に集まることを前提としているビジネスは、引き続き苦境に立たされるでしょう。具体的には、次のような業界が例として挙げられます。

飲食店やホテルなどの接客業
スポーツジムや映画館、ミュージアムといった娯楽・文化施設
ミュージシャンなどのパフォーマーやスポーツチーム
イベント会場や主催者
公共交通機関や航空会社
私立学校

これらの業界では、ビジネスモデルの転換も求められそうです。例えば、デリバリーサービスやリモートコミュニケーションなど、アメリカで「シャットイン経済(家にこもる経済)」と名付けられている分野に注目が集まると考えられます。

【事業戦略】グローバルからローカルへサプライチェーンの見直しも

事業戦略においては、サプライチェーンの考え方が変わる可能性があります。

世界的な感染拡大により、サプライチェーンがグローバルのさまざまな地域に分散している企業の中には、事業の継続が困難になったケースも少なくありません。リスク管理や対処の柔軟性の観点から、ニューノーマルでは「地産地消でのサプライチェーンのほうが望ましい」という考え方が主流になる可能性もあります。

【働き方、業務プロセス】リモートワークを前提とした業務プロセスに変化

働き方の観点では、すでに在宅勤務をはじめとするリモートワーク(テレワーク)が一般化しつつあります。国内では、テレワーク制度・在宅勤務制度を積極的に活用している企業が、コロナ渦以前の13%から43%まで増加しているという調査結果もあるほど(三菱総合研究所、2020年)。さらに、別の調査では、コロナが収束したあとに「会社に通勤して働きたい」と考えている人は減少する一方で、「通勤とテレワークを使い分けたい」と考える人が増加していることがわかっています(三菱総合研究所、2020年)。

これに伴い、業務プロセスもリモートワークをベースにしたものに変化していくでしょう。リモートワークを実現するツール(ビデオ会議、クラウド情報共有サービスなど)はいっそう普及しそうですよね。さらに、新たな働き方や業務プロセスに合わせ、人事評価の在り方も変わっていくと考えられます。

一方、現時点ではリモートワークが難しい職種でも、IT化によるリモートワークが進む可能性が示唆されています。例えば、製造業ではIoTとロボットを活用したスマートファクトリーが実現したり、小売業ではセルフレジが普及したりするといった見方も。世界中で業界を問わず、職場が様変わりしそうですよね。

国内でもすでに兆しが!事例に見るニューノーマルのビジネスのヒント

コロナの流行はまだ完全には収束していないものの、すでに国内でも、ニューノーマルを体現しているといえるような企業が登場してきています。ここでは、ビジネスモデルと働き方の2つの観点から、それぞれ事例を紹介しましょう。

【ビジネスモデル】CBcloud による「PickGo 買い物代行」

物流スタートアップCBcloudは2020年4月27日、7都府県を対象に「PickGO 買い物代行」をリリースしています。同サービスは、専用のアプリから店舗名と買いたい商品を指定すれば、ユーザーの代わりに提携ドライバーが買い物し、宅配してくれるというもの。配送地域内であれば、スーパーやコンビニのほか、家具店、家電量販店、飲食店(テイクアウト)での買い物にも対応してもらえます。

同社はもともと、企業間配送を行う企業とドライバーのマッチングサービスを提供していましたが、コロナの影響で件数が激減。そうしたピンチの中、外出自粛中の買い物に困っている消費者のニーズに応えるサービスとして、これまで培ってきた配送ネットワークを活かし、買い物代行サービスの提供に踏み切ったといいます。

ニューノーマルにおける新たなビジネスモデルでも、既存のリソースを大いに活用できることを示す事例だといえますよね。

【働き方】リモートワーク体制に移行したLAPRAS、本社オフィスも消滅

AIによる人材マッチングサービスを展開するLAPRASは、コロナ禍を機にフルリモートワーク体制へ移行。収束後もリモートワークをメインにすることを決め、渋谷区にある本社オフィスの契約も解除してしまったといいます。

その理由は、フルリモートワークでも仕事のパフォーマンス(商談の達成件数など)は下がることなく、多くの社員が「むしろ実感としてはパフォーマンスが上がっている」と考えていることがわかったため。さらに、対面でやり取りできない分、意識的にコミュニケーションを取ろうという機運が高まり、情報共有の在り方も改善されたといいます。

リモートワークのメリットはこれまでも指摘されてきましたが、実際にリモートワークを実施せざるを得ない状況になり、そのメリットを実感した企業は多いかもしれませんね。

なお、同社ではフルリモートの導入以前から、オンライン商談システムやクラウド会計ソフト、電話受付代行サービス、電子契約ツールなどを活用していたとか。こうしたサービスの活用方法もヒントになりそうです。

おわりに

コロナ収束後のニューノーマルは、それ以前の常識とは大きく異なる点も多くあります。ビジネスモデルや働き方の変化には負担も伴いますが、今回紹介した事例を見ると、必ずしも元に戻れないことを悲観する必要はないのかもしれません。コロナを機にやむを得ず変化した社会や経済の在り方が本当の日常になったとき、この困難を乗り越えられたといえるのかもしれませんね。


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