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201910.21

人口減少時代を生き残るプラットフォームビジネス。成功した企業の戦略とは

近年のビジネスシーンで勢いのある企業の共通点、そのひとつが「プラットフォームビジネス」です。

ビジネス面だけでなく、生活を振り返っても、AmazonやGoogle、Appleをはじめとする世界的な主要サービスから、AirbnbやUberなど新しいシェアリングエコノミーのサービス、楽天やLINEといった国内サービスまで、プラットフォームは今やとても身近なものですよね。

なぜ、こうした多くの企業がプラットフォームビジネスで成功しているのでしょうか。事例を交えながら、ビジネスモデルとしての有効性と、成功させるためのポイントについて考えます。

プラットフォームビジネスは、参加者が増えるほど価値を生み出せるビジネスモデル


プラットフォームビジネスは「複数のグループのニーズを仲介することによってグループ間の相互作用を喚起し、その市場経済圏を作る産業基盤型のビジネスモデル」と定義され、このようなビジネスを展開する組織(企業)は「プラットフォーマー」と呼ばれます(平野敦士カール、アンドレイ・ハギウ『プラットフォーム戦略』)。

国内の代表的なプラットフォーマーである楽天を例に、具体的に見てみましょう。

楽天は、商品を売りたい多数の小売店(=売りたい人・店グループ)と、商品を買いたい会員(=買いたい人グループ)をつなげる場として「楽天市場」というプラットフォームを提供しています。会員は、豊富な店舗の中からポイントサービスなどを利用してお得・便利にショッピングが可能。会員から口コミが広がり、楽天市場の会員が増えれば、出店店舗は自店舗での集客も期待できます。出店店舗が増えれば、会員のニーズをより満たせるようになるだけでなく、プラットフォーマー自身も出店手数料収入が増加。さらに、集まった会員は粗利益の高いプラットフォーマーの自社ビジネス・楽天カードへも誘導されています。

以上を見ると、プラットフォームビジネスは、プラットフォームという場に会員や出店店舗などの参加者が増えれば増えるほど、参加者もプラットフォーマーも価値を得られるビジネスモデルだとわかりますよね。参加者の相互作用で新たな価値が連鎖的に創造されていくところから、プラットフォームは「エコシステム」(生態系)にもたとえられています。

成熟社会で顧客数・客単価をアップさせるプラットフォームビジネス

プラットフォームビジネスは、特に市場が縮小しつつある経済的に成熟した社会で重要性を増すビジネスモデルだといわれています。プラットフォームビジネスで得られるメリットは次のとおりです。

●顧客数を増やせる
商品・サービスのラインナップが豊富になることで、多様な顧客ニーズを満たせるようになります。確かに、プラットフォームビジネスでなければ、家電や洋服、ゲームソフトの豊富なラインナップをすべてひとつのお店で売る、といったことは不可能です。プラットフォームビジネスを展開することで、家電を買いたい人も、洋服を買いたい人も、ゲームソフトを買いたい人も、すべてプラットフォーマーの顧客にすることができますし、プラットフォームに参加する企業もその恩恵を受けられるでしょう。

●客単価をアップできる
顧客を会員化することで、関係性を強化することが可能です。会員になれば、メールでセールの告知をするなど、来店を促しやすくなりますよね。リピートにより、顧客一人当たりの売上アップが期待できます。特にプラットフォームビジネスでは、参加企業が他社やプラットフォーマーと顧客を共有できるのもポイントといえそうです。

●効果的なマーケティングが可能になる
会員の属性や購買履歴などの消費行動データを蓄積して、マーケティングに活用することが可能です。特定の商品カテゴリだけでなく、カテゴリ横断的に膨大なデータを蓄積でき、マーケティングの可能性を広げられるのは大きな強みだといえます。

このように「限られたパイを奪い合って、自社の製品だけで自社がひとり勝ちする」というビジネスモデルではなく、「複数の企業がアライアンスを組むからこそ、パイが小さい中で各企業がより収益を上げられる」ビジネスモデルが、プラットフォームビジネスなんですね。

事例から見るプラットフォームビジネス成功のための3条件

プラットフォームビジネスを成功させるためには次の3つの要素が必要だといいます。事例を交えながら解説していきましょう。

●フリクションを軽減するためのプラットフォームになっていること
『プラットフォーム戦略』の著者であり、経営コンサルタントである平野敦士カール氏は「フリクション(人の行動を阻害する障壁となるもの)の軽減こそ、プラットフォームが生み出す価値であり、その価値が大きいほどプラットフォームの成功確率は高まる」と主張しています。

たとえばUberは、「車を持っていると駐車場など維持費がかかる。生活上自家用車は必須だけれど、自分で乗らないときは維持費が割に合わない気がしてもったいない」と考える人と、「タクシーをもっと便利に使いたいけれど、料金が高いし、乗りたいときにつかまらない」と感じている人双方のフリクションを解決するプラットフォームです。

さらに、両者をマッチングするだけでなく、ドライバー・乗客間の取引をすべてアプリで記録したり、決済をアプリで行ったり、ドライバーの評価を行ったりすることで、「運転手に対する安全性の不安(乗客側)」「料金を払ってもらえるかの不安(ドライバー側)」など、あらゆるフリクションを解消しています。

●プラットフォームに参加者が勝手に増えていく機能が備わっていること
プラットフォーマー自身が宣伝しなくても、参加者が参加者を呼んでプラットフォームが拡大していく仕組みが重要です。

例として、Facebookは、プラットフォーム内でゲームを作るためのAPIを公開し、多くの企業が自由にゲームを作成できるようにしました。このことで多くのゲーム制作会社がFacebook内にゲームをリリース。ゲームの多くは友だちを誘うことで楽しめるようになっており、会員が友だちを会員に招待する形で会員がみるみる増加したといいます。

●プラットフォームの参加者に不満を抱かせない仕組みができていること
顧客やアライアンスを組む企業は、不満を持つと他のプラットフォームに移ってしまう恐れがあります。

家庭用ゲームをプラットフォーム化したアメリカのアタリは、ゲームソフトの質を管理できていなかったために粗悪なコンテンツが氾濫し、ユーザーが離脱して事実上破綻してしまいました。

企業側についても、たとえばAmazonでは、プラットフォーマー自身は顧客との関係を構築できるものの、参入している企業やブランドにとっては逆に関係が弱体化する恐れがあることから、参入して数年後に離脱したり、初めから取り扱いを拒否したりしているケースもあります。アライアンスを組んでいる企業も公平にメリットを得られるような仕組みづくりが重要になりそうです。

おわりに

今後、人口が減少するといわれている日本で、プラットフォームビジネスはどの企業にとっても無関係ではなくなる可能性があります。自らプラットフォーマーになる場合だけでなく、既存のプラットフォームに参加する場合も、プラットフォーマーとどのような関係性を構築するかを戦略的に考える必要がありそうです。

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