2018
07.30

全社員リモートワークのシックス・アパートが語る「サボる」の概念と「引き算」思考

組織・人

働き方改革にともない、リモートワークの導入を検討する企業が増加しています。
しかし、

・顔を合わせずに円滑なコミュニケーションがとれるの?
・評価はどうするの?
・誰も見ていない環境で、中にはサボってしまう人もいるのでは?

などなど、リモートワークになじみのない企業からすれば、疑問が尽きません。

そこで今回は、2年前から全社員リモートワークを導入しているシックス・アパート株式会社を訪問。
同社の代表取締役である古賀早さんに、リモートワークでのコミュニケーションのとり方やマネジメントの方法、リモートワーク導入の第一歩として何をすべきかなどを伺いました。

そもそも「サボる」とは曖昧である。リモートワークはもっとも効率的な働き方

―率直な疑問ですが、リモートワークだとサボってしまいませんか?
姿が見えない分、本当に真面目に仕事をしているのか分かりませんよね。

―古賀
そうですよね。(笑)
でも、実は目の前にいたところで、サボらずに仕事をしているのかなんて本当は分からないんです。

たとえば社員の開いている画面を覗いたとしても、当社の場合は著名人のブログのシステム管理やSNSの運用も業務の一環のため、ブログやSNSをずっと眺めていてもそれは仕事の一環かもしれない。それならば、家にいたとしても同じです。

たしかに、たとえばweb担当者であればSNSを監視することも業務のひとつ。外側から見ただけではわかりません。
逆に言えば、職場にいたとしてもサボる人はサボる、と言えるかも知れませんね。

―古賀
そもそも「サボる」って概念は結構曖昧なんです。

家では自由に息抜きができます。
ワールドカップの再放送を見ても、地元の高校が出ている甲子園の試合を見ても、そのあとに集中して仕事をしてさえくれればいい。
それも、モチベーションや集中力維持のためのセルフマネジメントのひとつですから。

たしかに、一口に「サボる」といっても、まったく業務のためにならないわけではなく、多くはリフレッシュの時間。
仕事=なんらかの成果を出すことだとすると、リモートワークでは自分の好きな形でリフレッシュができるので、むしろ仕事に対して有益とも言えます。

―古賀
子どもも迎えに行けますし、実家に帰って仕事をするといったことも自由にできます。
つまり、子育てや介護などのライフステージの状況に合わせて、または趣味の時間を作るために、もっとも効率的な働き方が選べるということなんです。

そのほか、朝起きてすぐに仕事が始められる、通勤に使っていた時間を自分や家族の時間に還元できる、病院などは人の少ない時間帯に行くことができるといったメリットもあるんだとか。

通勤が「痛勤」と呼ばれて社会問題になっているいま、こうしたメリットはまさに「働き方改革」ど真ん中。いいことずくめな気がしてきます。

ローコンテクストコミュニケーションをどれだけ丁寧にできるか

―メリットについてはわかりました。しかし、やっぱり対面ではない分、コミュニケーションが滞ることはないのでしょうか?

―古賀
オフィスで同じ空間を共有していれば暗黙の了解もありますが、離れているために、業務を最初からすべて説明しなければならないといった大変さはあります。
ただ、すべて業務管理ツールやチャットなどの履歴として残るため「言った言わない」といったことがなくなります。

たしかに、対面だと無意識のうちに暗黙の了解で仕事を進めてしまいがち。
リモートであれば仕事はクラウド上で可視化できるため、個人の仕事内容を可視化できるのは大きなメリットといえます。

―古賀
また、社員が何十人もいれば中にはウマが合わない人もいますが、ほどよい距離感を保ちながらテキストによってコミュニケーションすることで、直接のコミュニケーションよりもスムーズに話が進むということもあるんです。

いわゆる、ローコンテクストのコミュニケーション。
テレワークで仕事を進めるうえで、ローコンテクストのコミュニケーションがどれほど丁寧にできているか、どれほどみんなに理解されているかはとても重要、と古賀社長は言います。

―古賀
今後はどんな企業でもローコンテクストのコミュニケーションは重要になっていきます。

少子化による人手不足で、企業は地方在住の人や外国人の雇用が増えています。
東京から地方在住の人を雇うのであればテレワークは必然ですし、外国人とスムーズに業務を進めるためには行間を読む必要のないローコンテクストのコミュニケーションが必要になります。

働き方もグローバルになっている現代、いかに暗黙の了解を言語化して相手に伝えるかは必須のスキル。リモートワークにおいては特に求められ、かつ鍛えられるスキルなんですね。

リモートワークへの第一歩は「足し算」ではなく「引き算」

―リモートワークを導入する際、まずは何から手を付けるべきでしょうか?

―古賀
足し算ではなく、引き算で考えることが重要です。

やりがちなのは「こういうときにはこういう申請をする」というルールを足し算してしまうこと。
こうすると、ルールは増えるにつれて使いづらくなるため、結局みんな会社に来てしまうということになりかねません。

シックス・アパートでは、「出社」というルールを最初に「引き算」したそう。
就業規則も大規模な改修をしたわけではなく、「出社」や「退社」という言葉をすべて「業務開始」と「業務終了」という言葉に置換したり、場所を特定する言葉があれば削除したんだとか。

―古賀
経費精算においても、領収書を提出するためだけにわざわざ出社しなくていいよう、スマホで領収書を撮影すれば経費精算ができるシステムを導入しました。

チーム毎に月1回は顔を合わせるミーティングを行っていますが、書類での手続きのためだけに出社しなければならないという「非積極的な出社理由」を徹底的に排除していったんです。

何かを制度化するときに、多くの企業はルールづくりに終始しがち。せっかく作ったルールも、煩雑な手続きなどがあると使われなくなり、結局白紙に戻ってしまう、という話はよく聞きます。
特に働き方を根本的に変えてしまうリモートワークの導入は、徹底的に引き算してシンプルにすることが重要なんですね。

リモートワークだとサボるのでは?という疑問は野暮だった

今回古賀社長にお話をお聞きして、「誰も見ていない環境で、中にはサボってしまう人もいるのでは?」などの疑問が野暮だった、ということに気付かされました。
むしろリモートワークは、きちんと運用されれば効率的な働き方が実現できるだけでなく、日本の通勤に関わる問題を一気に解決するポテンシャルを秘めています。

古賀社長、お忙しい中ありがとうございました。

The following two tabs change content below.
三ツ井 香菜

三ツ井 香菜

長野県出身、東京都在住。大学では化学を専攻し、新卒で入社した会社では医薬品分析を行っていた。その後、ライターに転身。マーケティング分野を中心に演劇、医薬、グルメなど幅広く執筆している。