2018
08.27

TABIPPOが立ち上げた人材紹介サービス「旅人採用」の真の狙い

世界の社窓から

少子化により、多くの企業が若手の採用に苦心するなか、登録者のほとんどが20代という異例の人材紹介サービスが今年4月に立ち上がりました。

その名も「旅人採用」。

旅人採用とは、そのとおり旅人のための人材紹介サービスで、バックパッカーや世界一周、海外留学、ワーキングホリデー、海外インターンシップなどの長期の海外滞在経験者を対象としています。

運営するのは、若者が旅する文化を創ることを目指してウェブ記事の制作やイベントなどさまざまな事業を展開する株式会社TABIPPO
今回は、サービスを立ち上げた理由や開始してからの反響、成功例などをTABIPPOの代表取締役社長である清水直哉さんにうかがいました。

起業家や優秀なビジネスパーソンは世界を知っている

―なぜ旅人採用のサービスを立ち上げようと考えたのでしょうか?

―清水
当社は正社員14人のうち10人が世界一周の旅を経験しているのですが、そんな旅好きのメンバーが「若者に旅を広めたい」という思いでTABIPPOを立ち上げ、事業を行ってきました。

ただ、単純に旅をしろと言っても、帰国後の就職や転職を考えると、旅をすることによってブランクが生じることに不安を感じる人も少なくありません。
そこで、旅や海外に行くことをポジティブに捉えられるようなサポートがしたいと考え、旅人採用を立ち上げました。

現在、日本人の年間出国率は14%で、先進国の中では極端に低く、そこに大きな問題意識を抱えていたんだとか。日本は自殺率が高く、幸福度が低いと言われますが、それは世界を見ていないからなのかもしれませんね……

―清水
起業家や優秀なビジネスパーソンには世界を知っている人が多いんです。世界を知ることがビジネスのアイディアや原体験につながるからだと思っています。

旅することによって、自分の持つ世界観のスケールをぐっと広げることで、ビジネスにもそれが生きるのかもしれません。旅人が持つ、ビジネスパーソンとしての資質に大きな期待を寄せられているんですね。

旅人という切り口で就活フローに合わない人材を獲得

―登録している旅人からの反響はいかがですか?

―清水
毎月300人ほどが登録してくれており、立ち上げて4カ月で1000人を超えるまでになっています。
登録者ひとりひとりに対してキャリアカウンセリングをおこなっていますが、こちらは4名で対応しているため追いつかなくて大変なほどです。

新卒採用と中途採用の両方をおこなっており、内訳は新卒と中途が半々程度なんだそう。ただし中途においても、そのうち86%を20代が占めるなど、若い層から注目を集めています。

さらに、新卒のうち79%が海外に1カ月以上滞在した経験を持ち、69%が6カ国以上、15%が20カ国以上を旅した経験を持っています。
中途人材についても同様の傾向だそう。本当に若い旅好きが集まっているのが分かりますね。

―清水
若い層が集まってきているのは、そもそもTABIPPO自体のターゲットを30代前半までとしているなかで、TABIPPOのイベントやウェブ記事を通して旅人採用の告知をおこなっているからです。

登録者が旅人採用を利用する理由としては、

・旅人採用があったからこそ就活をしようと思えた
・9月に留学から帰ってきたことで一般的な就活フローに乗りそびれてしまった
・就活サイトも利用しているが旅人採用であれば旅の経験をしっかりアピールできる

といった理由が多いんだとか。

一般的な就活サイトには何万という企業が登録している反面、自分に合う企業をどう探せばいいかが分からないという話はよく聞きます。
旅人採用であれば、旅をしている自分に魅力を感じてくれる、合う企業を紹介してくれるという安心感がありますね。

―清水
旅人採用は旅をフックに既存の人材紹介サービスとは異なる人の集め方をしていることから、「このサービスでなければ絶対に出会えないような人たちに出会える」と喜んでもらっています。

最初は興味がなかった企業でも、旅人をほしいと思ってくれるのであれば受けてみようと考えるきっかけにもなっているそう。
旅人という切り口で、今の就活フローに合わない人材と、その人材を採用したい企業をマッチングできるのは素晴らしいですね。

旅人はさまざまな価値観を受け入れる

―旅人に特有の価値観などはあるのでしょうか。

―清水
旅人に多いのは、さまざまな価値観を受け入れ、その上でコミュニケーションが取れる人。日本人の間でも価値観は異なりますが、世界中の国々に行けば日本人の当たり前さえも通用しない。
そういった環境に行くことによって養われる力です。

ほかにも行動力がある、英語は話せないのになぜか外国人とコミュニケーションがとれるといった人も多いですね。

清水社長自身も世界一周経験者であり、旅によって養われた人間性は大きかったと振り返ります。

―清水
私なんかはまさにそうで、サッカーしかしてこなかったため、旅をしていなければ今の自分はないでしょうね。

世界一周の旅ではいろいろなトラブルが起きるのですが、その度に自分でどうにかしなければならない。さまざまな国の人々の生き方を見て、日本がとても恵まれていることも感じました。
旅の経験から考え方がポジティブになり、人生にも前向きに生きようと思うようになったんです。

こういった話を交えながら営業することで、企業からは予想以上にポジティブな反応が得られているそう。

―清水
一般的に旅人を採用する懸念として、「すぐに会社を辞めてまた旅に出ちゃうんじゃないの?」と思われることもあるかと思いますが、現時点でそういった方々はターゲットにしていません。

旅の経験を生かして社会に貢献したい、ビジネスパーソンとして活躍したいという人を、キャリアカウンセリングを通してマッチングしています。

ずっと旅をしていたいという思いがある人には、カウンセリングの中でフリーランスを薦めたりすることもあるんだとか。
登録者が増え忙しい中でも、ひとりひとりに丁寧に向き合う姿勢から、旅人にとっても企業にとってもメリットのあるマッチングをおこなっていることが感じられました。

「旅は就職に有利」という雰囲気をつくりたい

―すでに採用に至った事例はあるのでしょうか?

―清水
これまで、15人程度に内定が出ています。立ち上げた時期が4月で、2019年入社の新卒採用真っ只中の時期だったため、内定者の7割ほどが新卒です。時期的にはこれから中途採用も増えてくると考えています。

なかには旅人採用を使って4~5人内定を出してくれた企業さんもあります。
実際に旅人と会った企業さんからは「おもしろい子が多いね」と言ってもらえるのでうれしいですね。

最終的には、サービス立ち上げの理由にもあったように、旅や海外に行くことに対するネガティブなイメージを払拭することを目指し「むしろ旅をした方が就職に有利と思ってもらえる雰囲気がつくれたら」と力強く語られていました。

日本で増え続ける訪日外国人の受け入れに対応していくために、海外経験は貴重な財産。
日本がよりグローバルでの競争力をつけるためにも、世界を知る人を日本のマーケットに増やす旅人採用の発展を願わずにはいられません。

清水社長、お忙しいなかありがとうございました。


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三ツ井 香菜

三ツ井 香菜

長野県出身、東京都在住。大学では化学を専攻し、新卒で入社した会社では医薬品分析を行っていた。その後、ライターに転身。マーケティング分野を中心に演劇、医薬、グルメなど幅広く執筆している。