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201809.25

「日本には独自のニーズがある」電子記録債権を扱う異色のベンチャーに日本のフィンテックトレンドを聞いてきた

みなさんは、フィンテックと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

フィンテックとは金融の分野におけるテクノロジーを駆使したサービスのこと。身近なものであれば、モバイル決済などを思い浮かべる人が多いかもしれません。

今回は、ベンチャー企業では初めて「電子記録債権」という制度を活用し、フィンテックで中小企業の成長を支援する、Tranzax株式会社 代表取締役社長の小倉隆志さんにお話をうかがいました。小倉社長は、日本には他国とはちがう、独自のフィンテックのニーズがあるといいます。

日本は中小企業がお金を借りにくい?

―まず初めに、最近のフィンテックのトレンドを教えていただけますか?

― 小倉
フィンテックと一口に言っても、ニーズは国ごとに大きく異なります。たとえば、モバイル決済は銀行口座を持っていない中国やアフリカといった国では当然普及が進んでいきますが、ほぼ全員が銀行口座とクレジットカードを持っている日本のような国ではモバイル決済を使う必要がありません。

また、アメリカでは資産運用をロボットがアドバイスするサービスが流行していますが、それは通常のアドバイス料が高いため、低価格でサービスを受けたいというニーズに応えるもの。日本の場合は、証券会社の店頭に行けば無料でアドバイスがもらえるため、どこまでニーズがあるかは疑問です。

したがって、単に外国のビジネスモデルを真似して日本で展開しているようなサービスもありますが、それはなかなか普及しないのではと思いますね。

―では、日本におけるフィンテックのニーズはどこにあるのでしょうか。

― 小倉
日本における金融上のもっとも大きな課題は、中小企業がお金を借りるのが大変だということです。マイナス金利やゼロ金利という言葉がよく聞かれますが、金利が下がったのは大企業向けの融資のみ。中小企業向け融資の基準金利は、短期プライムレートといって、この金利は9年間変わっていません。

そして、銀行は企業の過去3年分の決算書をもとに融資するかどうかを決めますが、日本の中小企業の実に6割が赤字だと言われています。その段階で門前払いになってしまうので、日本の中小企業の半分以上が、銀行からの融資をまったく受けられていないのです。

つまり、多くの中小企業が融資を受けたい、あるいは低い金利で融資を受けたいというニーズを持っているとのこと。

そしてTranzaxはそのニーズに対し、「電子記録債権」という技術を使ってサービスを提供しています。一体どのような技術なのでしょうか。

電子記録債権は簡単に言うと「手形」を電子化したもの

―貴社が提供されているサービスに使われている技術「電子記録債権」とは、どのような技術なのでしょうか。

― 小倉
それを知るにはまず、手形とは何かを知る必要があります。手形とは、簡単に言えば借用書のこと。私がAさんに1万円を貸し、そのあとでBさんに1万円を借りたとします。返すときは、私がAさんから受け取った1万円をBさんに渡す方法もありますが、Aさんから直接Bさんに渡してもらえれば手間が少ない。そのとき、Aさんが1万円を借りたという借用書(手形)をBさんが持っていれば、AさんはBさんに返せばいいということになります。

昔、手形は紙だったのですが、高価な印紙を貼らなくてはならない、無くさないように管理しなければならないなどといった大変さがありました。

それをすべてIT化したのが電子記録債権です。

電子記録債権は重要なデータのため、国が指定した企業でしか取り扱いが認められていません。日本では5社が認可を受けていますが、Tranzax以外はすべて銀行の子会社なんだとか。

― 小倉
銀行は、法律によって銀行に関係のある業務しかやってはいけないという規制がかけられています。つまり、電子記録債権でできる業務は従来の業務の電子化などに限られているということになります。しかし当社は銀行の子会社ではないため、金融庁と法務省の承認さえあれば、電子記録債権を使ってあらゆるサービスを展開することができるのです。

そこで、中小企業の資金繰りのニーズを解決できるようなサービスをつくっているのがTranzaxだといいます。

「電子記録債権」で、過去の決算にかかわらず融資が受けられるように

―Tranzaxのサービスには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

― 小倉
中小企業が特に資金繰りに困るのは、大口の注文が入ったときです。たとえば、月商8百万円、運転資金が5百万円の会社に5千万円の注文が来たとします。これは大きなチャンスですが、もしも材料代に3千万円かかるとすれば、その時点で2千5百万円をどこかから調達してこなければ注文を受けることはできません。

しかし月商8百万円の会社では3千万円を借りられないケースもあり、その会社の前期決算が赤字であれば、なおのこと借りることはできないといいます。

― 小倉
一般的に、手形はサプライヤーの中小企業が製品を納入した月の翌月末に発注元の企業から発行され、手形を受け取った中小企業が現金化を急ぐ場合は、それを銀行に買い取ってもらいます。しかし、そもそも材料代がなければ製品がつくれないため、それでは遅すぎます。しかし、発注書を受けた段階で電子記録債権を発行すれば、それを担保に融資を受けることができ、材料が購入できます。仮に前期決算が赤字だったとしても、発注元が優良企業であれば融資するに足る信用力があるからです。

こうして大口の注文を受けられるようにすることで、中小企業に成長機会を与えるというのが、当社が展開するサービスのPO(パーチェスオーダー)ファイナンスというサービスです。

融資が受けられないために大口の注文が得られず、成長機会を逃してしまう問題は、日本の中小企業、特にシステム開発に資金がかかるITや、材料費がかかる建設などの業界で多いのだそう。

サービスの仕組みとしてはITの力がなくてもできそうですが、これをすべて手作業でやるにはとにかく手間がかかります。それを、システム化することで簡単にできるようにした、というのが最大のポイントですね。

― 小倉
サービスはサプライヤーの中小企業をターゲットにしたものですが、サプライヤーが儲かれば設備投資ができるため、発注する側である大企業にとっても、次はもっといい製品をつくってもらえるかもしれないというメリットがあります。また大企業の信用力により、低い金利で融資を受けることができれば、その分製品の値段も下がる可能性もあります。

銀行にとっても、信用力のある大企業の発注という担保ができるため、これまで貸すことができなかった企業にも貸しやすくなるというメリットが生まれます。

銀行だって融資が増えなければ売上があがらないので、融資をしたくない銀行はありません。できれば5年後には日本のすべての銀行、信用金庫、信用組合に当社のサービスを導入してもらいたいと考えています。

「そうすれば、みんなが楽になる」と小倉社長。確かに、電子記録債権を利用することで、中小企業はもとより、大企業や銀行にも成長機会が生まれる、まさに三方良しの状態が実現できそうです。

現在も利用企業がどんどん増えているとのこと。こうしたフィンテックサービスを通して、日本経済が活性化されることを願っています。

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