201710.02

アメリカ、ヨーロッパ、アジア……世界の福利厚生事情

福利厚生は、給与と並び、就職先を決めるうえで重要なポイントのひとつ。各企業は、優秀な人材を集めるため、さまざまな福利厚生の工夫をしています。そのことは、海外諸国においても同様です。今回は、世界の福利厚生事情についてご紹介しましょう。

■アメリカ~退職金がない!その代わりに民間の年金に加入

Society for Human Resource Management (SHRM) の調査「2015 Strategic Benefits Survey」によると、調査対象となった企業のうち、38%が「過去1年間で、社員獲得のために福利厚生を改善した」と回答しています。また40%が、「過去1年間で、優秀な人材を集めるために福利厚生を活用した」とのこと。アメリカの企業は福利厚生の改善に熱心のようですね。以下で、アメリカにおける代表的な福利厚生を具体的に見ていきましょう。

・健康保険
アメリカでは公的な国民健康保険がないことから、企業が医療費をサポートしています。たとえば、会社がグループ保険に入り、従業員個人の保険料支払いを一部または全額負担するなどの方法が採られているようです。上記SHRMの調査によると、96%の企業が医療保険プランを提供し、従業員の総医療費の76%を企業が負担しているという結果が見られました。「国民健康保険のないアメリカは医療費が高い」というイメージも強いですが、企業によるサポートがあれば安心かもしれません。

・ウェルネス・プログラム
ウェルネス・プログラムとは、従業員の健康維持を目的とした制度です。たとえば、従業員一人ひとりに対して健康評価を行い、その結果によって、健康維持のための情報やサービスを提供します。SHRMの調査によると、69%の組織がウェルネス・プログラムを提供しているとのことです。従業員の健康維持は、医療費削減と生産性の向上につながりますから、企業にとってもメリットのある制度と言えますよね。

・年金
企業を通じて、民間の年金プランに入る制度です。アメリカには退職金制度がないため、その代わりの位置づけを果たしていると言えます。たとえば、もっともメジャーな401Kという方式では、従業員個人の積立金が給料から天引きされて、企業に預けられます。企業はその資金を運用して、積立額を増やしていく仕組みです。終身雇用という概念のないアメリカならではの福利厚生制度と言えるでしょう。

・ストックオプション
自社株の購入権を福利厚生として付与する企業も多くあります。アメリカでは資産運用の方法として株式投資が身近に行われていますから、日本人が思う以上にうれしい福利厚生なのかもしれません。

そのほか、有給休暇や住宅購入補助、社宅の提供、転勤の際の引っ越し費用などの福利厚生制度が整えられています。これだけの福利厚生があれば、もし、アメリカの企業に転職しても、快適に働けそうですよね。

■ドイツ、フランス~一風変わった福利厚生制度をご紹介

有給休暇取得率の高さが印象深いヨーロッパ諸国。有給休暇だけでなく、さまざまな福利厚生制度が整えられています。以下では、ヨーロッパにおけるちょっと変わった福利厚生制度をご紹介しましょう。

・フランスのチケ・レストラン
チケ・レストランとは、社外での食事や食品の購入に使える金券のこと。額面の半分相当額は給料から天引きされ、従業員の就業日数によって、ひと月に支給される枚数が決まります。額面は8ユーロ(約1,000円)程度で、これは一般的なレストランでランチを注文したときの平均的な値段なんだとか。日本ではあまりなじみのない制度ですが、フランスではとてもメジャーな制度で、多くのお店でこのチケ・レストランを利用できます。給料から半分は天引きされているものの、ちょっとお得な気分になりそうですよね。おいしいランチは充実した午後の時間を作ってくれるはずです。

・ドイツのクリスマス手当
ドイツのボーナスに当たる手当で、ほとんどの企業で採用されている福利厚生制度です。金額は給料の1か月分程度となっています。キリスト教の国ならではの福利厚生制度と言えるでしょう。ちょっとしたクリスマスプレゼントの気分を味わえそうですよね。

■インドネシア~イスラム教の国ならではの福利厚生制度も

発展の目覚ましいアジア諸国のひとつ、インドネシア。インドネシアでも、有給休暇や通勤手当のほか、最近日本でも注目され始めた「誕生日休暇」などの福利厚生制度が整っています。

さらに、インドネシアならではの興味深い福利厚生制度にも注目です。代表的なものが、「レバラン手当」。レバランとは、ラマダン(断食月)明けの大祭のことです。企業は、法律でレバラン手当の支給が義務づけられています。支給額は基本給の1か月分が一般的で、多い場合には3か月分も支給されることもあるそうです。レバランはイスラム教徒にとって大切な祭日。帰省して家族でお祝いすることも多いようです。その帰省費用としてレバラン手当が使われることも一般的だそうですよ。日本の企業もインドネシアに進出することは多いでしょうから、このレバラン手当についてはよく知っておいた方がいいかもしれませんね。

■おわりに
どの国も、国の制度や国民性、宗教などを考慮して、福利厚生をさまざま工夫していることがわかりますよね。職場がグローバル化するなか、今後は外国人の従業員にも満足してもらえるような福利厚生制度が必要となりそうです。福利厚生を魅力づけにして、世界中の優秀な人材を集められるといいですよね。

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