201810.01

最近よく聞く〇〇テックって?X-Tech(クロステック)が注目される背景

「フィンテック」「メドテック」「アグリテック」など、「〇〇テック」への注目が集まっていますよね。「〇〇テック」は総称して「X-Tech(クロステック、エックステック)」と呼ばれています。メディアで頻繁に目にするのはもちろん、実際にX-Techビジネスを始める企業も多くなりました。

X-Tech は2015年ごろから見られるようになった動きです。株式会社NTTデータ経営研究所が2017年に発表した「企業のX-Techビジネスの取り組みに関する動向調査」の結果によると、

「その業界内部の企業のみならず業界の垣根を超えてきた異業種やスタートアップが、『業界の知見』とデジタルのような『洗練されたテクノロジー』をコアとして創り出す、今までの常識を打ち破るような新しいサービス・製品」

と定義されています。つまり、既存の業界に最新のテクノロジーを組み合わせ、新しい価値を提供するようなサービス・製品だと言えるでしょう。

今回の記事では、X-Techが注目される背景やビジネスモデルの傾向などについて、実例やデータを見ながらトレンドをチェックしていきましょう。

X-Techとは?台頭の背景にある3つの要因


X-Techに活用される代表的なテクノロジーは、たとえば以下のようなもの。

・AI
・ビッグデータ
・位置情報
・ロボット
・高機能センサー(生体センサー、温度センサー)
・VR

どれも近年、ビジネスへの活用が進んでいる技術といえるでしょう。

冒頭の調査結果によると、「X-Techを知っている」と回答したベンチャー企業勤務のビジネスパーソンのうち、X-Techのビジネスの立案検討や立ち上げについて「過去に経験したことがある」「現在、経験している(取り組んでいる)」「まだ経験はしていないが、今後そういう経験をすることが決まっている」と回答した人の合計は26%にも上っています。

X-Techが台頭してきた背景は、主に3つあると言われています。

【背景1】価格の低廉化やクラウドの普及によりITをビジネスに取り入れやすくなった

IT製品の価格が全般的に低くなったり、クラウドが普及したりすることで、ITをビジネスに取り入れやすくなりました。既存企業がビジネスをIT化しやすくなっただけでなく、ITを活用した新規の起業も容易になってきています。

【背景2】スマートデバイスの普及でユーザーとの接点が持ちやすく

スマートフォンやタブレットが普及したことにより、企業がユーザーとの接点を持ちやすくなりました。ITサービス利用者のすそ野が広がることは、そのまま市場の拡大を意味します。また、顧客データの収集がしやすくなっているのも重要です。

【背景3】テクノロジーの進歩でデータ処理能力が向上

技術的な進歩も、X-Techの台頭を後押ししています。IoTデバイスから収集した大量のデータも、短時間で複雑な処理が行えるようになりました。

X-Techの4つの主要なビジネスモデル


さまざまな分野で登場しているX-Techですが、ビジネスモデルは大きく以下の4つに分けられるとされています。

「モノを売る」モデル

ユーザーの属性や購入履歴、閲覧履歴といったデータに基づいたレコメンドが付加価値となっている、物販サービスのビジネスモデルです。Amazonが代表的。

「マッチング」モデル

ユーザーと中小規模の事業者をマッチングさせることを付加価値とするビジネスモデルです。タクシー配車サービスを展開するUberなどはその一例と言えます。

「お知らせ」モデル

IoTデバイスから収集したデータを活用して、異常などをユーザーに「お知らせ」するビジネスモデルです。たとえば、株式会社パワーエレックは、IoT製品「見守りコンセントWiFi-Plug」を通じて家電の消費電力を監視し、データ化して、電力の使用パターンが不自然なときに家族へメールなどでお知らせするサービスを展開しています。

「アドバイス」モデル

ユーザーの行動履歴や属性に基づいて、より潜在的なニーズに合った高度なアドバイスを提供するタイプのビジネスモデルです。国内の例では、株式会社FiNCのヘルスケアアプリが挙げられます。ユーザーの歩数や体重、食事、睡眠時間といったデータをもとに、AIのコーチがチャットでアドバイスするサービスです。

「みどりクラウド」の事例から学ぶX-Techビジネス成功の要素


X-Techが注目を集めているとはいえ、当然、やみくもに始めてもビジネスは成功しません。ここでは、X-Techビジネスを成功に導くために必要な要素について、株式会社セラク「みどりクラウド」のアグリテック(農業×IT)の事例を見ながら考えていきましょう。アグリテックは農業人口の減少・高齢化や、農業のグローバル化といった社会背景から注目されています。

株式会社セラクの農業IoTサービス「みどりクラウド」は、先進的なアグリテックサービスのひとつ。温室内に装置を置くだけで、湿度や温度などの室内環境を測定してスマートフォンやタブレットで結果を確認できたり、付近の気象予報データを取得して菜園の環境変化を予測したりできます。

同社はもともと、ITインフラ構築やWebサイト制作といった事業を展開しており、2011年にAndroidを組み込んだ洗面台「スマート洗面台」でIoTに本格参入。その後、社内で「地方の一次産業における課題を解決したい」という声が上がってきたことから、みどりクラウドのプロジェクトが始まったと言います。

当時はまだ「アグリテック」という言葉もあまり聞かれなかった時代。さらに、農業とはほぼまったく関わりのない企業であったことから、農家とのつながりの持ち方や、農家のニーズの把握に苦心したとか。そんな状況を打開できたのは、農業向けの環境計測装置開発などをおこなっているエスペックミック株式会社と大阪府立大学と共同でおこなった、農業用環境モニタリング装置に関する研究開発でした。きっかけは、みどりクラウドの開発責任者の恩師が、大阪府立大学に在籍していたことだったと言います。IT系企業がIT以外の業界へと垣根を超えていくX-Techだからこそ、幅広い人脈の活用がより重要になりそうです。

上記の共同研究開発によって農家との接点を持てた同社は、現場のニーズをこまめに反映しながら開発を推進。プロトタイプを農家の人たちに実際に使ってもらってフィードバックを得るといった取り組みもおこないながら、2015年にみどりクラウドを完成させました。細かい使い勝手など、ユーザーのちょっとしたニーズを逃さずくみ取ることも、ビジネス成功のポイントになると言えるでしょう。

みどりクラウドを導入した農家は、2018年3月の段階で1,100以上。ユーザーからは、「環境の最適化で収穫量が120%増加した」「ハウス温度調節方法を見直すことができ、生産コストが20%減少した」といった声が届いているといいます。「ITを使うことで農業が楽になる」というだけでなく、生産性の向上という実際的なメリットがあることが、みどりクラウドを成功に導いていると言えます。

今後は、農家から得た栽培データの蓄積を生かして、栽培支援・流通支援をおこなっていきたいとのことです。ユーザーとの双方向的なやり取りのなかでサービスが洗練されていくのが期待できそうですよね。

おわりに

業界にイノベーションを生み出すX-Tech。サービスを使用するユーザーひとりひとりの生活が便利になるだけでなく、業界の生産性が向上するなど、経済全体にもいい影響をもたらす動きだと言えます。業界の数以上に広がるX-Techビジネスの今後の可能性に、注目していきましょう。

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