201711.21

受け入れ態勢は大丈夫?地方自治体のインバウンド囲い込み施策とは

日本へのインバウンド(訪日外国人)は年々増え続けています。日常生活でも、外国人観光客を目にしない日はありませんよね。実際に、2017年10月の訪日外客数は前年同月比21.5%増の259万5千人と、2016年10月の213万6千人を46万人近く上回っています(※日本政府観光局調べ)。

インバウンドは増え続けているものの、通信環境や交通手段といった受け入れ態勢が十分に整っているとは言えません。

各自治体は企業と連携し、外国人のお困りごとを解決することでインバウンド誘致に動いています。今回は地方自治体、企業のインバウンド囲い込み施策についてご紹介します。

西日本鉄道の訪日外国人専用の乗車券「MARUTTO FUKUOKA(まるっと福岡)」

電車の乗り継ぎって、日本人でもわからないことがありますよね。路線図が複雑な上、降りる場所によって料金も変わってきますから、日本語がわからない観光客は苦労するところです。駅での外国語表記も進んできましたが、まだまだ十分とは言えません。

そんな中、西日本鉄道が訪日外国人専用の乗車券「MARUTTO FUKUOKA(まるっと福岡)」を2017年1月から発売しています。福岡市内を走る路線バスに何度でも乗り降りできる「福岡市内1日フリー乗車券」に、人気の観光地太 宰府・柳川にもアクセスできる「西鉄天神大牟田線(太宰府線・甘木線含む)全線1日フリー乗車券」をセットにしているそう。

訪日外国人専用の乗車券ということもあり、英語、韓国語、簡体字、繁体字に対応。訪日外国人の不満第3位の言語バリアをうまく取っ払っています。価格も大人 2,000 円、小児 1,000 円とリーズナブルなので、福岡に訪れる外国人はこれ一つで福岡エリアをまるっと楽しめます。どんどん利用してほしいサービスですね。

困った時のWi-Fi頼み。静岡総合観光案内所でWi-Fi貸し出し

首都圏ではWi-Fi環境が整備されてきたものの、面倒な登録が必要な場合もあったり、地方ではそもそもWi-Fi環境が整備されていなかったり……。できれば自分でルーターを持ち運びたいですよね。特に外国人観光客には、わからないことをその場で調べられるインターネットへのアクセスはとても重要です。

静岡市では、ビジョンと業務提携し、外国人観光客へWi-Fiルーターを貸し出す取り組みが行われています。外国人観光客は、静岡総合観光案内所で申し込み、ルーターの受け取りができ、移動しながら高速通信を利用することができます。

また、一度借りれば静岡県内だけでなく全国で使用可能で、かつビジョンが運営している空港カウンターにて返却できるとのこと。つまり、静岡に訪れるついでにWi-Fiを借りて、静岡以外の土地を訪れ、帰国時にご利用の空港カウンターで返却する、といった動きが可能です。同様の取り組みは高知県でも行われており、現在、23箇所の観光案内所や施設等で展開していて、さらに追加展開をしていく予定です。

Wi-Fi完備にクラウド翻訳? 城崎温泉のインバウンド獲得IT活用

風情のある温泉街でも、外湯の場所を調べる際などにネットに接続できたら便利ですよね。城崎温泉のある兵庫県豊岡市では、外国人観光客限定でWi-Fiのアクセスポイントを市内40箇所に設置しており、外湯やメインストリートなどで使用できます。外湯めぐりの際に位置確認のためグーグルマップを使ったり、外湯の料金を確認したりできるので、外国人観光客からの需要は高いと言えるでしょう。

さらに、アクセスポイントの接続状況のデータを旅行者の導線分析に使用しているとのこと。この分析によって旅館などの店舗では営業時間を見直すといった対策が取れるので、より外国人観光客への柔軟な対応が可能になります。
また、城崎温泉では2016年4月、クラウドソーシングでの在宅ワーカーを活用した動画チャットでの翻訳サービスの実証実験が行われるなど、インバウンド対策で先進的な取り組みを多く行なっています。

外国人観光客の母国語全てに対応した通訳人材を雇うのはコストの面でも難しいので、クラウドソーシングを活用した取り組みはコストを抑えるという意味で魅力的ですね。日本全体のインバウンド向け施策に活かせる事例として、目が離せません。

おわりに

インバウンド向けの施策は多くありますが、交通手段の整備や、Wi-Fi環境の充実など、地道な受け入れ態勢の強化が求められています。まずは紹介した事例のように、日本人の「当たり前」を外国人観光客にも当たり前にすることが、インバウンド獲得への近道かもしれませんね。

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